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住まいの安全対策—MISAWA SAFETY REPORT

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住まいの安全対策―MISAWA SAFETY REPORT

背景

平成29(2017)年厚生労働省の人口動態統計によると、子ども(14歳以下)の死因の2位、3位に位置するのが不慮の事故で、これは過去の統計においても継続して上位にあり、不慮の事故のなかで最も多くの割合を占めるのが家庭内から起こっていることも明らかになっています。2003年には交通事故死を上回り、残念ながら増加傾向にあります。住まいは災害などから命を守る存在である一方で、家庭内から発生する事故で多くの命が失われています。

住まいの安全対策―MISAWA SAFETY REPORT

ミサワホーム総合研究所が取り組んだ内容・経緯

ミサワホーム総合研究所は、この事実にいち早く着目し、住宅メーカーの社会的責任として、安全対策・軽減対策を提案すべく家庭内事故の実態を調査・分析しました。家庭内の怪我の発生率は高齢者より子どもの割合がはるかに上回っている事実から、「子どもにやさしい家は高齢者を含めたすべての人にやさしい」という考え方のもと「MISAWA SAFETY REPORT」が作られました。住宅内を8箇所の場所別に検証し、住宅を建築する立場にとどまることなく、「事故の実態」「予防・軽減対策」「お母さんの経験談」「ベビーシッターからのお願い」「ドクターアドバイス」の視点から訴求しています。
同レポートは1993年より1年間にわたり発行され、1995年に書籍『住まいの安全を考える本』として上梓。2007年にはキッズデザイン賞(リサーチ部門)を受賞しました。現在は高齢者や障がい者を対象とする福祉住環境コーディネーターの資格制度が国内で広く認知されていますが、この試験制度の開始は1999年でした。ミサワホーム総合研究所はそれよりも前から、住まいの安全性についての研究を重ねており、掲載した内容は歳月の隔たりを感じることなく、今なおさまざまな面において一目置かれています。

住まいの安全対策―MISAWA SAFETY REPORT

具体的な内容

浴室
これまでの統計において不慮の事故の中の上位に位置するのが溺死です。とりわけ家庭内の不慮の事故では浴室の浴槽内で起きておりトップです。浴室には熱湯によるやけどや滑りやすいタイル上での転倒、打撲など、様々な危険が潜んでいます。こうした変わらない現状を踏まえ、
 ①浴室や浴室内に手すりをつける。滑りやすい素材やタイル、浴槽の形にも配慮
 ②浴槽の高さに配慮
 ③サーモスタット付き混合水栓
 ④浴室内の金具は危なくないもの
 ⑤浴室内暖房を考慮
 ⑥樹脂製浴室ドアの使用
 ⑦浴室に鍵をつける
 ⑧浴室の蓋はたわみにくく、滑りにくいものを
 ⑨コンセントは浴室外につける
の9項目を提案しています。また、当時の乳幼児の母親たちからヒアリングした事故の経験をはじめ、事故を回避するためのノウハウとしてベビーシッターから「浴室には鍵をかけ、浴槽に残し湯をしない」、医師からの「子どもの重心は高く、頭から浴槽に転落するのでわずかな水でも溺死」は、見落としやすい箇所に注意を促しています。

バルコニー・窓
家庭内の不慮の事故のうち、トップ3に入るのが転倒・転落・墜落です。子どもの場合、死亡率は低いながらも事故率は高いというデータもあり※1、バルコニーや窓は、子どもにとって外の世界へ通じる素敵な場所であると同時に危険ゾーンでもあり、それだけに程度に関わらず配慮が求められます。ここでは
 ①手すりの高さは110cm以上に
 ②足がかりを作らない
 ③手すりのすき間は11cm以下に
 ④手すりの強度や形状にも配慮を
 ⑤窓にも手すりをつける
 ⑥サッシの工夫による転落防止
 ⑦フラワーボックスなどで落下物防止を
 ⑧家具の配置に考慮を
の9項目を提案として挙げています。特に高さについては「1メートルは一命取る」と言われるほど、バルコニーや窓からの転落は重大事故につながるというドクターアドバイスは記憶にも残りやすく、子ども目線の大切さを訴求しています。

階段
子どもの事故で病院を訪れたケースによると※1、階段事故が目立っており、住宅の中で危険な場所であることがわかります。事故のほとんどは階段が「すべりやすい」「急である」「手すりがついていない」が原因と考えられ、これらの問題をクリアすれば未然に防げることから、安全対策が急がれます。
これに対し「設計上の配慮」「手すりをつける」「階段まわりを明るく」の3点を挙げ、それぞれ具体的に配慮すべき点(踊り場を設ける等)を網羅しました。

サッシ・ドア
ドアやサッシは、人が出入りするたびに触れる場所のため、子どもや高齢者に限らず、小さな事故は頻繁に発生します。子どもが歩き始める頃から年令と共に増え、当時のデータによれば※2 3~4歳でピークを迎えています。そこでサッシに対しては
 ①安全性を配慮したサッシ
 ②雨戸をシャッターにする
 ③外を通る人にも配慮を
の3視点から、ドアに対しては
 ①引き戸が安心
 ②反対側にいる人が見えるようにガラスに
 ③あおり止めをつける
 ④把手(取っ手)を工夫する
 ⑤ドア枠まわりのチェックを
の5視点から提案しました。3〜4歳児は親の言う事もわかる年令のため、開け閉めする時に「指をはさまないようにそっとね」などの言葉や態度での安全教育の重要性がベビーシッターからのアドバイスとして添えられています。

居室
居間や子ども部屋、寝室などの居室に共通する事故は、床での転倒、設備や家具によるもの、誤飲・誤食など多岐に渡るため、
 ①床や天井
 ②冷暖房機器
 ③掃除機やアイロン
 ④ベビーベッドや家具など
 ⑤誤飲・誤食
の5つのケースを挙げ、それぞれに乳幼児のお母さんたちからの事故体験、ベビーシッター・ドクター・ハウスプランナーからのアドバイスを盛り込みながら紹介しています。

キッチン
キッチンは火を扱い、包丁を使うので日常的に親が注意することから、子どもの事故は意外と起きにくいのですが、発生事故の多くはやけど、感電、ガス中毒などの設備関係です。 ここでは
 ①流し・レンジまわり
 ②テーブルまわり
 ③誤飲・誤食
という3つのケースをお母さんたちからの事故体験、専門家からのアドバイスと共に紹介しています。漂白剤や強いアルカリ洗浄剤は特に注意を要しますが、万が一誤飲・誤植があった場合の備えとして「普段から誤飲・誤食の処置を知っておくこと」「心配なときは飲んだものを持って医師に相談を」というドクターアドバイスは、事前事後対策の要です。

洗面所・トイレ
人口動態統計によれば、平成29年度の統計でも同レポート調査元となった平成3年度の統計でも変わっていない結果があります。それはシニア層の死亡順位です。60代、70代、80代は揃ってトップが悪性新生物、2位は心疾患、3位が脳血管疾患の順を占めています。不慮の事故は、乳幼児のそれ(2位、3位)と比べると4位、5位ですが、上位の心疾患、脳血管疾患の誘因となるものの一つに急激な温度差が挙げられます。特に冬場の洗面所、トイレ、浴室の脱衣所は、暖房の効いた部屋からの気温差から急激に血管が収縮するなどにより、心疾患や脳血管障害を招く恐れがあるのです。
また大人の真似が始まる子どもにとっては、化粧品、ドライヤー、カミソリなどに興味の湧くアイテムが揃う魅力的な場所となり、使い方の未熟さから危険なゾーンともなりかねません。ここでは、トイレについては1局所暖房を2ドアは外開きに3外から開けられる鍵を4手すりをつける、洗面所に関してはすっきり収納保管できる洗面化粧台を2洗濯機は収納式に3サーモスタットつき混合水栓に―といった提案を行っています。

玄関・廊下
廊下は平面が多いため、一般的に危険の少ない場所のように考えられがちですが、意外と事故の多い場所でもあります。特に高齢になるにつれ、バランスを失い、よろめいたりすべったりして転倒するケースが発生します。玄関ドアは重いものが多く、開閉時に手を挟むなどの重大な事故につながる危険性があります。 これらの安全対策として、玄関については
 ①玄関ドアまでのアプローチの段差に工夫を
 ②玄関・たたきには滑りにくい素材を利用する
 ③玄関にも手すりを付ける
 ④開閉速度を調整できるドアクローザーを付ける
とし、廊下に関しては
 ①廊下の床の仕上げに配慮する
 ②段差を設けない
など提案しています。

応急処置ガイド(FIRST AID)
一連の場所別に掲載したドクターアドバイスに対する応急処置を取りまとめて付録にしたのが応急処置ガイドです。
 ①頭を打った
 ②体を打った(打撲・ねんざ)
 ③手や指をはさむ
 ④切り傷・すり傷・刺し傷
 ⑤やけど
 ⑥溺れた
 ⑦誤飲・誤食
のケースごとにそれぞれ病院に行く場合と家で様子をみる場合の目安を中心に、その間の手当てなどを解説しています。 ミサワホーム総合研究所ホームページ内よりPDFでの無料配布を行なっています。

まとめ

家庭内事故の安全対策は、事故を起きにくくするだけでなく、被害を小さくする「環境・設備の配慮」と保護者の習慣や子どものしつけなどの「習慣・行動の見直し」に分けることができます。重症度の高い事故ほど「環境・設備の配慮」を優先して対処し、未然に防ぐことが大切です。この部分を補うものとして、ミサワホーム総合研究所では「ヒヤリハットさんちへいってみよう!」という大人も子ども学べるサイトを用意しています。



※1, ※2 独立行政法人国民生活センター「消費生活年報2005」

関連リンク:FIRST AID 応急手当ガイド