Mレポストーリー
自宅は安全？「家庭内事故」の意外な真実と、備えに必要な考え
家庭内事故は交通事故よりも多い
住宅業界初の研究所として創立時から多数の研究テーマに挑み続けている弊社。どの研究テーマにも根底に「安全・安心な住まいづくり」への想いがあります。なかでも、継続して取り組み続けている研究テーマに、家庭内事故があります。
日本では、建物での事故等を防ぐため、細かな基準が法律で定められています。例えば階段は、建築基準法により、踏面（足を踏み込む面）、蹴上（階段の立ち上がり部分）、踊り場の寸法が、建物の用途ごとに決められています。あまりにも急勾配の階段や、踏面が狭い階段は、転倒・転落事故が起こりやすいからです。歴史的建造物等の昔の民家の階段を見て、急勾配に驚いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
実は、建築基準法が生まれたのは1950年（昭和25年）で、思いのほか制定から時間が経っていません。基準が無かった時代から、国は多くの人の命・健康を守るために、それまで設定されていた限られた施設だけでなく、一般の住宅まで環境の基準を定め、改定してきました。
それでも、家庭内事故は後を絶ちません。人口動態調査※１によると、1990年代後半から家庭内事故の死亡者数は増加傾向にあり、2003年頃を境に交通事故の死亡者数を超えています。（図１ 詳細はMレポvol.115）一方、交通事故の死亡者が減少してきた背景は様々ありますが、交通安全に関する法が整備されてきたことと、車の安全性能が大幅に向上したことが寄与していると言われています。住宅でも同様に提供者側の私たちができることがあると考え、取り組みを続けています。
図1 家庭内事故死亡者数の増加
注力してきた子どもやお年寄りを守る取り組み
弊社では、国で定められた最低限の基準を満たすことはもちろん、住宅会社として独自の提案や工夫を重ね、事故を防ぐための設計の工夫を研究し続け、住まいづくり等に活かしてきました。特に、家庭内事故の主な被害者である、子どもと高齢者を対象にした家庭内事故を防ぐ安全対策に注力してきました。
子どもの家庭内事故を防ぐ取り組みには、安全に配慮した住宅部品や空間設計を提案し、キッズデザイン賞を多数受賞しています。例えば、キッチンでの子どもの事故を防ぐスライドゲート収納は、住宅メーカーならではの視点でライフステージの変化を考慮し、永続的に使用できるキッチン用の収納家具としてデザインしています。
また、住宅部品や設計提案だけでなく、家庭内事故に関する研究の結果を皆さんに活用していただく取り組みもしています。住まいの安全対策を紹介した「ミサワセーフティレポート」、遊びながら住まいの安全対策について学ぶことができる絵本とWEBサイト「ヒヤリハットさんちへいってみよう」などがあります。
年齢を重ねながら自分らしく暮らし続けるために
一方、ご高齢の方の家庭内事故を防ぐ取り組みは別のアプローチで取り組んでいます。超高齢化社会を迎え、住み慣れた自宅で自分らしく、できるだけ長く暮らし続けるニーズが高まっています。2023年の内閣府の調査結果では45.8％※2の方が終の棲家として自宅を選択しています。そういったニーズの高まりがある一方で、年齢を重ねても、ご自宅は建てた当時のままという方も少なくありません。住み慣れた自宅で安全に生活を継続するためには、年齢に応じた居住空間の見直しが不可欠です。
ミサワホームでは、50歳以上のお客さまを中心に、より健康で長く暮らすためのリフォーム提案「ウエルネスPLAN」をお勧めしています。「50歳では早いのでは？」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、年齢を重ねていくと不便に感じるところが増えていきます。そういった時期の不要な事故を防ぎ、いざというときに家庭内で介護しやすい居住空間にしておくことをお勧めしています。実は、家庭内事故の中でも多い転倒事故は、骨折から要介護に繋がる可能性があります。状況が深刻化する前に検討を進めることが精神的な安心にも繋がります。
Mレポvol.115では、これまでフォーカスされてこなかった、一見、元気で安全な方々（一般成人層）の事故を対象に解説しています。ご参考のうえ、まずは、自分の暮らしでヒヤリとした経験を振り返り、その対策とあわせて将来への備えを始めてみてはいかがでしょうか。
※１ 厚生労働省：人口動態調査（https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html）
※２内閣府 令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果
