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省エネルギー関連の効果の見える化を目指したお客様向けソフト開発のあゆみ

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背景

ミサワホームでは1970年代にミサワホーム総合研究所内に省エネルギー研究チームを発足し、ECO住宅の研究開発に取り組んできました。また2002年には自然環境との共生を目指すECO・微気候デザイン(※1)を開発し、その設計手法を取り入れてきました。

関連リンク:テクノロジー:微気候デザイン FRONTIER STORY

―方、世の中では住宅性能表示制度により2000年からは建物断熱性能の評価が、2013年からは設備機器の性能を含めた一次エネルギー消費量の評価が始まり、2012年にはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)(※2)への補助金制度も始まりました。しかし、効果が目に見えず分かりにくい高断熱化や省エネ・創エネといった対策はイニシャルコストアップを伴い容易には普及せず、ランニングコストを含めた費用対効果を簡易的に説明することができるツールの開発が求められました。

そこでミサワホームでは、省エネルギー関連の効果を見える化でき、営業担当者が商談時に活用できる独自のシミュレーションソフト開発に着手しました。また、コスト面だけでなく温熱的な快適性や健康への配慮も重要なポイントと考え、それらを評価するソフト開発にも取り組んできました。

シミュレーションソフト開発の始まり

2005年に、お客様情報を元にした光熱費、一般的な在来木造住宅とのCO2排出量の差を植樹に置き換えた環境貢献度の訴求、推奨機器の説明、太陽光発電住宅の発電量等を出力する「ECOエネシミュレーション」を開発しました。そこでは建物規模や地域、希望設備だけでなく、ご家族のライフスタイルや冷暖房の使い方等も反映させることにより、より実態に近い値を出力するような工夫がされていました。

さらに、微気候デザイン設計の訴求機能や建物の断熱性を示すQ値(熱損失係数)計算機能、燃料電池の計算機能を追加する等、改良してきました。その後、2008年にはお勧めのリフォーム提案やECOリフォーム導入時の光熱費算出ができる「リフォーム版ECOエネシミュレーション」も開発し、幅広い評価・提案ができるようになりました。

簡易的なZEH評価シミュレーション

2015年に、ZEHの基準適合確認に必要な建物断熱性能・省エネ率・ゼロエネ率の判定だけでなく、最大開口率(窓等の開口面積の床面積に対する比率)目安、太陽光発電の必要最低容量目安等も出力する「ZEH簡易シミュレーション」を開発しました。それにより、ZEH基準適合とのバランスを考えながら窓サイズや太陽光発電容量を検討することができるようになりました。

シミュレーションソフトの一本化

2016年には「ECOエネシミュレーション」に代わるツールとして「ZEH簡易シミュレーション」に光熱費計算機能を加えた「光熱費シミュレーション」を開発しました。そこではインターネットを通じて国立研究開発法人建築研究所のエネルギー消費性能計算プログラム(Webプログラム(※3))にアクセスさせることにより、ツール自体の計算負荷を軽減させることを可能にしました。構成としては、断熱仕様・設備仕様の違いによる比較や昔の木造住宅との比較等を通し、提案仕様の効果を明確化しました(表1)

〈表1〉省エネ評価

また、ZEHだけでなくZEHより求める創エネ性能が緩和されたNearlyZEHに対する太陽光発電の必要最低容量目安の表示機能や蓄電池のシミュレーション反映機能、ZEHよりハイグレードなZEH+R・LCCM住宅の判定機能の追加等、時代の流れに合わせて改良してきました。

独自の「微気候デザイン」評価

以前から訴求してきた微気候デザイン設計について、その効果を見える化し最適な仕様に導く微気候評価シミュレーションソフトとして、2017年に「Vikiなび」を開発しました(図1)

(図1)微気候デザインの主な手法

そこでは室温推移予想の表示だけでなく、微気候デザインヘの総合的な取組みの程度を表す微気候グレードや、冷暖房しなくても快適に過こすことができる時間を表すVikiTime等の独自評価を表示させることで、ZEH基準を意識しながらもエネルギーベースの評価に偏らず住まい手の快適性にも配慮した住宅を提案できる仕組みとしました。

断熱改修による健康・快適性評価

住生活空間の断熱性向上が居住者の健康に与える影響に関する知見が得られつつあり、健康寿命等への関心が高まったことから、2018年に健康リスクを低減し、いつまでも自分らしい暮らしを楽しむための「カラダとココロのウェルネスリフォーム」提案を開始し、あわせて断熱改修効果を見える化する「あたたかウェルネスリフォームなび」を開発しました。これにより、ミサワホームのリフォームメニューを「カラダ健やか性能」と「ココロ豊かデザイン」に整理して紹介すると共に断熱改修による各室の室内温熱環境改善効果を体感温度や上下温度分布等によって数値化し、お客様に分かりやすく提案できるようになりました。2020年には、リフォーム用プレゼン作成システム「リプラボ」内に「断熱性診断」機能として取り込んでいます。

クラウド化による機能拡充と環境貢献評価

2019年に、「光熱費シミュレーション」の機能をクラウド化(※4)した新築住宅向けの「すみごこちカルテ(省エネ性能編)」を開発しました。それにより常に最新の評価ができるだけでなく、お客様情報等を他のシステムと共有して一括管理できるようになりました。ここでも省エネ地域区分や断熱仕様に応じて室内の温度推移や上下温度分布等を予測して表示させ、入居後の温熱環境をイメージしやすくしました(図2)

(図2)上下温度分布

さらに、太陽電池・蓄電池・燃料電池の導入を環境貢献として評価する仕組みも導入し、2電池(太陽電池・蓄電池)では太陽光発電による電力の自家消費量の増加を、3電池(太陽電池・蓄電池・燃料電池)では一次エネルギー消費量の減少をCO2排出量削減効果と捉え、それを自動車の走行距離等に置き換えることによって効果を身近に感じられるような表現としました(図3)

(図3)2電池環境貢献

今後の展開

今後は、買電価格の上昇や電力買取価格の低下等に伴い太陽光発電による電力の自家消費の有効性が高まっていきます。そうした状況に対応するためHEMSによる自家消費制御機能等が開発されてきており、エコキュート(自然冷媒CO2ヒートポンプ給湯機)の昼間沸き上げを評価する機能を追加する等、条件に応じて最適な評価・提案ができる仕組みとしていくことを考えています。これからもお客様に総合的なコスト評価や健康で快適な住まいづくりの大切さを理解していただくことはもちるん、自らの住まいがカーボンニュートラルに貢献できることを意識していただく仕組みづくりが大切だと考えています。また、これらの開発実績を基に外部企業向けのシミュレーションソフトも開発しており、その請け負いの拡充も目指しています。


  • ※1微気候とは住まいとその周辺に眼った局地的な気候のこと。「微気候デザイン」とは昔ながらの知恵と先端テクノロジーを融合させ、四季を通じ住まい手の五感に訴える、快適で心地良い空間をデザインすること。
  • ※2高い断熱性能をベースに、高効率機器やHEMSによる省エネ、太陽光発電等による創エネを組み合わせることで、住宅の一次エネルギーの年間消費量が正味で概ねゼロになる住まいのこと。
  • ※3 https://house.lowenergy.jp/
  • ※4初期は提案内容をA3プレゼンシートにまとめて提示していたが、クラウド化に伴いA4カルテでも詳しい評価を提示できるように変更。また評価項目の増加等によりシミュレーション結果算出に10~20秒程かかっていたが、クラウド化に伴うプログラム言語変更等で時間短縮を実現。