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蒸暑地サステナブルリビング研究

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背景

熱帯から亜熱帯の蒸し暑い地域(蒸暑地域)は、日本では南九州・沖縄から、さらに東南アジアをはじめとする広い地域に広がっています。これらの地域は人口の増加が著しく、CO2排出量も大幅に増加することが予想されています。加えて高温多湿で年間を通じて気温差が小さく、低緯度の為紫外線が強く、台風の常襲があるといった課題もあります。
一方、日本の産業部門のエネルギー消費量がこの30年間に2割近く減少しているにも関わらず、住宅部門のエネルギー消費量は2倍になっており、今後の成長が見込まれる国々の住宅においても長期的対処が必要になると考えられます。

ミサワホーム総合研究所が取り組んだ内容・経緯

このようなことを踏まえ、沖縄科学技術大学院大学(OIST)とミサワホーム総合研究所は、蒸暑地域の生活におけるエネルギーおよび水に関して持続可能(サステナブル)な導入および利用を可能にするシステムを構築し、快適な生活を提供する住宅を開発することを目的として、2016年3月に実験住宅を建設しました。

具体的な内容

実験住宅は、沖縄県恩納村谷茶に位置するOISTの敷地内にあり、屋根に設置した太陽電池が発電する際に発電に寄与しないエネルギー(熱)を活用して室内の除湿を可能にするシステム、壁全面で冷房する放射冷房システム、宅内DC(直流)給電などを実装しています。
合わせて、限られた雨水等を生活用水として活用する地産地消型水システムの開発も行い、これから電気・水インフラを整備する諸外国も含めて、サステナブルな暮らしの提案を目指します。



〇カスケードソーラーデシカント(除湿)システム
カスケードソーラーは、PV(太陽電池)で発電しながらPVモジュールの裏面で暖まった空気を屋根最上段のモジュール裏面から取り込んで利用するミサワホーム独自のシステムです。PVが発電する際に発電に寄与しない「熱」を除湿(デシカント)の再生熱として利用することで、太陽エネルギーの利用効率を高めることにつながります。
集熱空気温度は最高で70℃程度まで上がり、集熱した空気は水と熱交換し、蓄熱タンクに蓄えることが可能で、夜間や曇天時にも蓄熱タンクからの熱で除湿運転を可能にします。
集熱するとPVの温度は下がり、PVの発電効率が上がるという副次的効果もあるため、次世代のPV活用技術として確立することを目指しています。

〇中温冷水壁・天井放射冷房
室温に近い約20℃の“中温冷水”を壁室内側表層部に流し、これまで実現できなかった健康で快適な放射冷房を可能にします。壁に冷水を流すことは結露を誘発するためこれまで避けられてきましたが、カスケードソーラーデシカントで安定的に除湿された空間だからこそ実現できる理想の空調システムです。エアコンの課題であったカビ臭さや気流による不快感、埃の巻き上げなどを解決できる可能性があり、また中温冷水を使用することはさらなる省エネルギーの可能性を秘めています。

〇再生可能エネルギー活用型宅内DC給電
太陽電池、風力発電から得られる直流(DC)電力をバッテリーで蓄え、宅内の各DC電源負荷及び電気自動車に供給するシステムを実証します。将来的なDC家電の普及も見据え、DCコンセントを実装し、宅内利用の課題抽出を図ります。今後、OISTやSONY CSLが実証を進めているOES(オープンエネルギーシステム)との融合により、ローカルな再生可能エネルギーを活用したボトムアップ型のエネルギーシステムを目指しています。

〇循環型雨水利用システム
蒸暑地域に属する諸外国は必ずしも水インフラが整っているわけではありません。また、日本も限られた水資源を有効に利用する必要性が認識され始めています。実験住宅では、屋根に降った雨水や室内除湿水分を貯めて、敷地内の植栽散水や洗浄水、やがてはシャワーやトイレ用水として利用する循環型雨水利用システムの在り方を検討します。降雨量は季節によって増減しますが、貯水と用途に応じて水処理する技術を組み合わせることで、年間を通して地産地消型の水利用の実現を目指しています。


関連リンク:蒸暑地サステナブルアーキテクチャー サステナビリティレポート(p.8)