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家のスマホ化

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スマートホームの現状と未来

「IoT(モノのインターネット化)」「AI(人工知能)」。今や、誰もが知っているこの2つの技術・概念が、家の中にも入ってくるようになりました。たとえば、スマホを使って家の外から玄関扉を施錠する、スマートスピーカーに話しかけてテレビをつける、温度センサの値を使って窓の開け締めやエアコンを自動で制御する、AIが居住者の行動を先回りして家電を制御する等、「家電や住宅設備の操作」だけを見ても様々な「便利なサービス」を居住者が利用できるようになっています。このように、IoTやAIの技術を使って居住者に利便性の高いサービスを提供することを目的とした住宅のことを一般に「スマートホーム」と呼ばれています。
現在、スマートホームのサービスを様々なメーカー(ex. 住宅メーカー、家電メーカー、IT機器 メーカー)が居住者に提供しています。その背景には、クラウド(インターネット上に仮想的に存在しどこからでもアクセス可能なサーバ)を構築する技術が進歩してきたことが、1つの大きな要因と言えるでしょう。今では、各メーカーのクラウド内で実現されるサービスが、家の中に複数個入っていることも珍しくありません。それはまるで、1つの家の中に仮想的な「小さなスマートホーム」が複数存在するようなイメージに近いかもしれません(※1 左)。
そして今、「クラウド間連携」と呼ばれる、各メーカーのクラウドを連携させることによってバラバラだったサービスを繋げようという考え方が浸透しつつあります(※2)。将来的には、各メーカーの提供するサービスまたはデバイスが有機的に連携しながら「より付加価値の高いサービス」を居住者に提供できるようになるでしょう。独立した「小さなスマートホーム」の集まりに過ぎなかった家が、「1つの大きなスマートホーム」になるのです(※1 右)。

居住者が求める “暮らし” から “サービス” を考える

「1つの大きなスマートホーム」の実現により、居住者に対して多種多様なサービスを提供することが可能になります。さらには、日々進化し続けるセンサデバイス等の低コスト化や高精度化、AI技術(ex. 機械学習、ディープラーニング)などのデータ分析技術の高度化に伴って、各サービスの実用性も向上してきています。
このような状況の中で、「居住者にとって実現したい暮らし」を満たすようなサービスを自分自身で見つけて家に導入し、さらには複数のサービスを連携させることは、非常に困難です。“暮らし” のスペシャリストとしてその取捨選択をサポートし、最適な取捨選択によって居住者にとっての「豊かな暮らし」を実現することのできる家を提供することが、我々住宅メーカーの役目だと考えています。そして、その家こそが我々の考える「真のスマートホーム」なのです。
我々は、「居住者が求める“暮らし”とは何か」「その暮らしを実現するために必要な“サービス”は何か」について常に考えています。

課題①“デバイス”の重複

スマートホームに求められる多数の“サービス”をそれぞれ独立して考え、各サービス毎に利用したい “デバイス”(ex. カメラ、マイク、センサ、スピーカー、等)を全て家の中に導入してしまったらどうなるでしょうか。家という限られた空間の中で、便利な“サービス”を実現すればする程、センサ等の“デバイス”がどんどん増えていってしまうことでしょう。
例えば、人のいる場所に向かって送風する為にエアコンに付いている熱画像センサ、電源消し 忘れ防止の為にTVに付いている人感センサ、子供・高齢者の見守りの為のカメラ等、現時点で居住者に提供されている“サービス”を例に挙げても、同じ目的(この例では「人の位置を知る」) をもった“デバイス”が同一区間内に複数個存在する、という無駄が発生する可能性が十分に考えられます。

課題②“機能”の重複

近年、AI技術やクラウド技術の著しい進歩に伴って、データ分析の多様性・実用性が急激に向上しています。家の中に設置したセンサやウェアラブルセンサ、家電の使用状況、SNSの情報(データ)をそのまま使うのではなく、1箇所に集められた膨大なデータ(=ビッグデータ)を1つのデータ群とみなして分析することによって、「居住者の好み」や「生活行動パターン」等の1つのセンサでは知ることの出来ない情報まで把握できるようになってきています。もちろん、より利便性の高い“サービス”を提供するためには、「センサデータを必要な情報に変換する“機能”」が必要不可欠になります。
「居住者の好み」や「生活行動パターン」等が、様々な“サービス”で利用する価値のある情報であることは、誰でも容易に想像できることでしょう。しかしながら、それぞれの“サービス”を独立して考えていたら、“デバイス”同様、“機能”までもが重複してしまう可能性があるのです。

「家のスマホ化」の必要性

もし、家の中に最低限の“デバイス”や“機能”だけが存在し、各“サービス”がそれらをシェアしながらシステムを構築できれば、先述した「“デバイス”/“機能”の重複」を防ぐことができます。結果、居住者にとっては「家の中が綺麗になる」や「コストが抑えられる」といったメリットが生まれ、“暮らし方”の提供者(=“サービス”提供者)である我々メーカーにとっては「“サービス”開発のサイクルが早くなる」や「“デバイス”の管理がやりやすくなる」といったメリットが生まれます。
これはまさに、我々が毎日のように利用しているスマートフォンと同じ発想です。スマートフォンには、加速度センサやGPS、映像や音声の入力/出力機能等、必要不可欠な“デバイス”や“機能”が標準で備わっています。そして、我々ユーザは自分が使いたいアプリを好きなようにインストール/アンインストールし、各アプリはGPS等の“デバイス”や“機能”を駆使して「生活を豊かにする“サービス”」を実現しています。さらには、アプリ開発者は「アプリ内でどの“デバイス”や“機能”を使いたいか」を記述するだけでよく、ハードウェアの専門的な知識の無い人でも比較的簡単に便利なアプリを開発することができるのです。
この発想を“住まい”にも取り入れることを「家のスマホ化」と我々は呼んでいます。この「家のスマホ化」の実現こそが住宅メーカーの目指すべき「居住者の“暮らし”を豊かにする“サービス”を提供できる家(=真のスマートホーム)」に近づくための大切な一歩だと考えています。そこで、現在我々は、家の中にどんな“デバイス”や“機能”があれば「十分」なのか、それらを家のどこにどのような形で導入すれば「最適」なのか、そこに求められる家としての形(ex. 間取り、 躯体、構造、材料)は「どうあるべき」なのか、について答えを見つけるための研究をスタートしています。

※1 「小さなスマートホームの集まり」から「1つの大きなスマートホーム」へ

※2 クラウド間連携のイメージ
(出所:スマートライフ政策について、経済産業省、平成30年2月)


関連リンク:ミサワホームのIoT住宅