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保育環境創造カード「ホイクリ」

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保育園設計時の課題

ミサワホーム総合研究所は、ミサワホーム・東京大学と共同で保育環境創造についての研究を行い、7つの保育園と1つの保育園施設を調査したところ、当初の意図とは違った保育空間の使われ方をし、意図の通りに活かされていないケースがあり、保育環境の計画段階で2つの課題が明らかになってきました。1つ目は設計者の意図が教育者*に伝わっていないこと。2つ目は教育者の想いが設計にうまく反映されていないことです。
これには、設計者は教育者のプロではないために、教育目標や活動用語への理解が十分でないことが挙げられます。また保育園の建設は、許認可の関係上、短期間が行われることが多く、設計者の意図が教育者側に十分に伝わっていないことも考えられます。
一方、教育者側から見れば、設計者に対し自分たちの教育方針を上手く伝えることができない点、設計のプロではないことから図面を引くことへの理解がしにくい点が見えてきました。
この双方のコミュンケーションギャップが埋まれば、より良い保育環境を創ることができるのではないかということに着目し、“共通言語”となるツールを開発することになりました。
*ここで表現している「教育者」は、保育事業者、園長、保育士等を含みます

ホイクリが出来るまで

そのコミュニケーションツールは「ホイクリ」と名付けました。ホイクリは「保育」と「クリエイション(創造)」を合わせた造語です。
開発にあたっては、まず調査を行った保育空間と、保育園児の行動(想定を含む)の分析を行い、「単独行動/集団行動」を縦軸、「屋内/屋外で行う行動」を横軸にしたマトリックスで分類しました。このマトリックス上で、例えば「ごっこ遊び」は屋内を外問わず一人でもグループでもでき、一人遊びの場合は物語をつくる創造性が育まれ、みんなとのごっこ遊びは交流・育ち合いという社会性に通ずるということが分かります。
こうした分類をもとにさらに保育空間を分析していくと、カードのベースが出来上がってきました。
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ホイクリについて

実験住宅は、沖縄県恩納村谷茶に位置するOISTの敷地内にあり、屋根に設置した太陽電池が発電する際に発電に寄与しないエネルギー(熱)を活用して室内の除湿を可能にするシステム、壁全面で冷房する放射冷房システム、宅内DC(直流)給電などを実装しています。
合わせて、限られた雨水等を生活用水として活用する地産地消型水システムの開発も行い、これから電気・水インフラを整備する諸外国も含めて、サステナブルな暮らしの提案を目指します。
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■使い方

ホイクリは、設計者と教育者の双方が使うカードです。両者の打合せの際、カードを提示して保育方針を把握することができます。図面や模型での説明のときに、言葉だけでは難しい空間の役割や利用イメージを共有できます。「成立させるためのキーワード」はそのカードに書かれた空間を作るための設計のヒントになります。
一方、教育者は、まず保育環境を構想するときに保育方針に沿ったカードを選びますが、カード同士のつながりを意識しながら選び出したカードを並べると設計者に説明しやすくなります。図面を打合せするときには、部屋ごとの役割を確認し、図面上にカードを置くとイメージが可視化、共有されます。これは改築増築などを検討する時にも有効です。
空間を利用するとき、複数の教育者がいても設計された意図の通りにその空間を使ってもらえるようになります。

・目的
カード完成後、保育園設計時のコミュニケーション支援ツールとして、有効性を図る検証を行いました。ホイクリによって設計者と教育者のコミュニケーションがどのように向上したかをカード実践、ヒアリング、アンケートのプロトコルから効果を測定するもので、検証は計3回行いました。
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・参加者/所要時間
教育者からは園長または主任クラスから3名、設計者はミサワホームのデザイナー3名が参加し、双方からペアを組み、各日約5時間の実験となりました(休憩含む)。

・取り組んだ課題・プログラム
既存保育園の敷地図を使用して「理想の保育園」を創ることを課題とし、教育者が所属する現在の保育園を、改めて「理想の保育園」としてリ・デザインすることに取り組んでもらいました。 カードの説明を行った後、教育者から保育方針を聞き、骨格となるカードを選んでもらいます。そして選んだカードをもとに具体的な空間イメージを話し合いながら、空間、園庭それぞれのデザインを描き、最後にまとめていくというプログラムです。

・プロセス
カードを全て広げてコミュニケーションをとりながら教育者がカードを選んでいくチーム、カードは教育者が一人で選び、選んだ理由を聞く時間を別途設けていたチームとチームによって特徴がみられましたが、いずれの教育者もカードによって話がしやすかった、見落としていたことを再確認できたという結果を得ることができました。 設計者側は保育園の設計経験値が異なることから、カードの介入度合いに差がみられましたが、特に設計経験の浅い設計者にとってはカードによって教育者の話を聞きだしやすくなっていることが判りました。

・検証結果
双方とも打合せや検討の際に共通言語となるツールが必要かとの問いに対し、全員が「必要だと思う」と回答。課題であった「理想の保育園」は作れたか、に対して教育者は全員「大変良く作れた」、設計者は全員「どちらかといえば作れた」という回答でした。
ホイクリを使用してどんな点が良かったかとの問いに対しては「優先順位がわかりやすくなった」「メモをとらずに話ができた」「設計で足りない部分のチェックがしやすい」「空間の構成がしやすい」「先生の想いがよくわかった」(以上設計者)。「想いを伝えるのが得意ではないがきちんと伝えることができた」「設計者の質問に答えやすかった」「カードによって新たな発見や気づきを得られた」(以上教育者)というコメントが寄せられました。
検証の結果、ホイクリは教育者にとって保育環境を伝えるための支援ツールとして有効であること、設計者にとっては教育者の考えや想いを引き出す支援ツールとして有効であるだけでなく、経験の少ない設計者にとっても設計作業の支援ツールとして有効であることが判りました。

最後に

このホイクリは第9回キッズデザイン受賞(子どもの未来デザイン感性・創造性部門)を受賞しています。同カードはミサワホーム総合研究所のホームページ(https://soken.misawa.co.jp/hoikuri/index.html)から無料ダウンロードできます。新たな空間イメージが浮かんだ場合を想定し、空欄カードも用意しています。独自の構成要素を追加していくことでホイクリがその場にカスタマイズされていくことになり、さらに育てていくカードでもあります。

関連リンク:ホイクリ