GAINET

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GAINETとは

ミサワホームとKDDIが共同開発した被災度判定計「GAINET」は、住宅の基礎に設置する加速度センサーで地震波を計測し、表示部で計算したリアルタイム震度と建物及び地盤の被災度判定結果を表示し、音声と連動して警告します。リアルタイム震度により、自宅における地震規模の大きさを確認することができ、建物及び地盤の被災度判定結果により、入居者は、自宅に留まるか避難するかの判断指標とすることができます。またスマートフォンアプリやパソコンから専用ウェブサイトを通じて、離れた場所でも自宅の状況を確認することが出来ます。
計測されたリアルタイム震度や被災度判定結果のデータは、高速データ通信が可能なLTE網を経由してクラウドサーバーに集約します。ミサワホームでは、全国の住宅の被災度を地震終了後直ちに把握し、緊急度に応じた入居者サポートを行うことができます。また、地震波の初期微動(P波)を感知し、大地震時には主要動(S波)が到達する前に警告を音声で発信し、いち早く地震発生を知らせる事が出来ます。更にバックアップ電池を搭載しており停電時も一定時間作動することが可能です。図2に被災度判定計「GAINET」及び防災ネットワークの仕組みを示します。
被災度判定計「GAINET」は、住宅専用に量産化した被災度判定計としては国内初となります(自社調べ)。また、LTEネットワークを経由してクラウドサーバーにつながる「家のIoT」を実現し、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC:会長 安田靖彦)が主催するMCPC award 2015の「モバイルテクノロジー賞」(ユーザー部門)を受賞しました注1)。また2016年にはグッドデザイン賞を受賞しました注2)。

図1 被災度判定計「GAINET」の概要
被災度判定計「GAINET」の概要

図2 防災ネットワークの仕組み
防災ネットワークの仕組み


開発の背景と経緯

近年多発している大地震時の被害調査において、隣接した同形状の建物の被害状況が異なる場合がありました。これは、建物に入力される地震波は、表層地盤の影響が非常に大きい為と考えられます。これまでは、気象庁や防災科学技術研究所が発表した地震波を元に建物の被害状況の分析を行ってきましたが、建物への入力地震波は建物や地盤ごとに固有であるため、被害状況を把握するためには建物ごとに入力地震波を得ることが必要だとわかりました。 また、東日本大震災では被災地域が広範囲であったため対象建物も非常に多く、被災状況の把握及びその後の復旧に多くの労力と時間がかかりました。 これらの過去の震災の経験から、建物ごとの被害状況をいち早く把握することが入居者の安全確保と早期の建物復旧につながると考え、被災度判定計を開発しました。 図3に示すように被災度判定計の開発は、構想期間を経て2010年から試作機(Ver.1の製作を開始しました。Ver.3では、KDDIと共同開発により通信機能を搭載し、2015年に販売を開始しました。開発にあたっては、2010年に国交省の助成事業注3)により開発を着手しました。また、2017年には総務省のモデル事業注4)により防災ネットワークシステムの構築の実証事業を実施しました。

図3 開発の変遷
GAINET年表


被災度判定方法

図4に被災度判定の仕組みを示します。被災度判定計は、建物の基礎に設置した計測部に入力された地震波と予め入力した建物の構造情報を用い計算を行うことにより、リアルタイムに建物の被災度判定を行います。 計算方法は、串団子モデルを用いた弾塑性応答計算です。建物ごとの構造情報を被災度判定計のインプットデータとして用いることで、個々の建物の層間変形角を計算することができます。 建物の構造情報となる復元力特性は、既往の実験及び文献調査からスリップ-バイリニアモデル(図5)とし、スリップ率は0.8程度とすることで木造建物のスリップ特性を表現しています注5)。 被災度判定を実施するに当たり、建物の荷重-層間変形角と構造体の損傷及び内外装材損傷状況の関連性を把握する必要があります。そこで建物における主要な耐力要素である耐力壁面の静的加力時の構造特性に関するデータを実験及び文献より収集し、構造体の層間変形角と仕上げ材の破壊性状の相関関係を整理しました注6)7)。これらのデータを被災度判定表として図6にまとめ、建物の耐震性能評価の基礎としました。また、地震被害を受けた建物において、仕上げ材の損傷状況により建物の構造性能を評価することに活用できると考えています。 建物ごとの構造情報を用いて弾塑性応答計算により算出した層間変形と被災度判定表を用いることで、建物の被災度ランクを判定することが可能になりました。

図4 被災度判定の仕組み
被災度判定の仕組み


図5 スリップーバイニアモデル
スリップーバイニアモデル


図6 被災度判定表
被災度判定表


おわりに

被災度判定計の開発は、数多くの基礎開発が礎となり一つの製品になっています。そして今後は、被災度判定計により多くのデータを収集し、そのデータを分析することで更なる精度向上や地震被害低減に繋がる可能性があると考えています注8)。将来的には、住宅だけにとどまらず、多くの建物に被災度判定計を設置し、防災ネットワークを構築するとともに、ビッグデータの分析による更なる精度やサービスの向上の検討を行っていく必要があると考えています。 ミサワホーム総合研究所では、地震発生時の安全確保のための注意喚起と地震収束後の安全確保や安心のための情報を提供するとともに、地震後も安心して生活できるようきめ細やかな復旧支援が可能となるよう今後も活動していきます。


注1) http://www.mcpc-jp.org/award2015/
注2) https://www.g-mark.org/award/describe/43913
注3) 国土交通省 平成22、23、24年度「住宅・建築関連先導技術開発助成事業」に採択。「戸建住宅下に設置する地震計の開発及び評価・運用方法に関する研究開発」にて被災度判定計の基礎開発を実施。
注4) 総務省 平成28年度第2次補正予算「IoTサービス創出支援事業」に採択。「地震情報・被災度情報によるビッグデータを活用した防災ネットワークシステムのモデル事業」にて被災度判定計を用いた実証事業を実施。
注5) 梶川久光他:スリップ型復元力特性を有する1質点系弾塑性構造における地震最大応答予測に関する研究,日本建築学会構造系論文集第660号,pp.353-362,2011.2
注6) 鶴田修他:木質系住宅の地震時仕上げ損傷と建物変形角に関する実験的研究,日本建築学会構造系論文集第613号,pp.73-80,2007.3
注7) 大木洋一郎他:木造建築物における仕上材の損傷状況と地震時経験最大層間変形角の推定に関する研究,日本建築学会技術報告集第59号,pp.159-164,2019.2
注8) 梶川久光他:建築物の被災度判定計による防災ネットワークの研究開発 その1~13,日本建築学会大会学術講演梗概集,2014.9~2018.9