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南極の建物

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過酷な環境- 南極の観測活動支援に取り組む理由

1957年1月29日、東オングル島に上陸した第1次南極地域観測隊は、付近一帯を「昭和基地」と命名し、1957年2月14日には11名の越冬隊が成立しました。ここから、日本の南極における観測活動が始まりました。
ミサワホームが初めて南極昭和基地に供給した建物は、創業翌年の昭和43年(1968年)に第10次南極地域観測隊が設営した第10居住棟です。この建物1998年にその役目を終えて、解体され日本に里帰りしました。持ち帰った建物は、経年変化よる耐久性への影響等を探るため、種々の検査、試験が行われました。その結果、南極の厳しい気候に30年も耐えていながら、その強度は十分保たれていることが実証されました。ではなぜ、ミサワホームは創業以来、地球上で最も過酷な環境の一つである南極での観測活動を支援するために、建物を供給し続けているのでしょうか。それは、工業化住宅として求められる究極の姿がそこにあると考えているからです。すなわち、
 ①高性能であること(高強度、高断熱、高気密、高耐久)
 ②高品質であること(工場生産且つ、誰が施工しても品質のばらつきが無い)
 ③短工期であること(現場施工を少なくする)
 ④輸送が容易であること(軽くコンパクト)

南極の厳しい環境において、この一つ一つの課題を最高のレベルで充たしながら、さらに、研究開発・設計・生産・輸送・建設の全体が一つのシステムとして機能していることが求められます。そのためにミサワホームは50年以上挑戦し続けています。南極観測活動を設営の面から応援し、極寒の地で建物の様々な技術を鍛え、確立された技術を国内の建物にフィードバックします。そのことで工業化住宅の発展に寄与し、社会へより良い住宅を供給していくことが大きな目的です。

基本観測棟(2015年) 平面図

南極の建物

南極建物製作実績

1968年の第10居住棟から2018年12月現在までに、延べ36棟 5,933.2m²の建物を供給してきました。(表1参照)

【建物の設計条件】
南極昭和基地の建物は次に示す様々な条件を、克服しなければなりません。
気象条件
・最低気温:-45.3°C※室内は、20°C前後を保つこと
・最大瞬間風速:61.2m/sec(≒220km/h)
 ※0.25秒間隔で測定される瞬間風速3秒間の平均値の最大
・最大風速:47.4m/sec(≒170km/h)  ※10分間の平均値の最大
・最大風速15m/sec以上の日数:119日(2016年)
輸送条件
現行の南極観測船しらせは、一部コンテナ方式の荷役システムを採用し、国際規格の12フィート(約3.6m)コンテナ56個の積載が可能です。それにより従来よりも貨物積降時間の大幅な短縮が可能となり、また部材梱包についても大幅に不要となり、資源節約、ゴミ削減にも役立っています。
製作部材は、大きく次の3種類の方法により積載されます。
・12フィートコンテナ
コンテナ内寸:W3590mm×D2310mm×H2210mm
収納部材の長辺は、3460mm以下に納める。フォークリフトでの出し入れが前提のため、フォークの爪が入る様にパレット、または下部に空間が必要
・ヘリコプター用コンテナ
コンテナ内寸:W1400mm×D1000mm×H655mm
・船倉
鉄骨等の長尺部材は、長手方向8m以内

建物の部材設計は、この条件を満たす事が必要です。南極現地では、海氷上に停泊したしらせから荷下ろしし、その海氷上を雪上車と橇を使って昭和基地まで輸送します。氷上輸送中の振動対策も必要です。
施工条件
・日数:建設作業が行えるのは、夏期の約50日間です。しかし、天候により左右されます。
・人員:設営の建築隊員が主となり、他の観測隊員、しらせ乗組員の協力を得ても、約800人工の作業量しか確保できません。
・重機:35トンのラフテレーンクレーンの使用が可能です。

基本観測棟 外観

【建物の概要】
建物の内外気温差が約70°Cにまで達するので、熱伝導率の大きな鉄骨等はそのままでは、ヒートブリッジによって冷気が伝わり室内側に結露を起こします。また重量があることから、輸送にも建設の取り回しにも適しません。また、現場施工や現場加工が多い在来木造や鉄骨造では、作業人工や専門技術者の不足から短期間での完成は困難です。コンクリート造では、低温による障害、骨材の現地調達困難などから、やはり短期間での完成は困難です。そこで考案されたのが、木質パネル接着工法です。昭和基地の多くの建物に、この工法が採用されています。断熱性の高い木材を主材料とし、材料としてはもともと軽量ですが、さらに軽量化と断熱性を高めるために格子状に芯材を組み、そこに断熱材を入れて両側から合板を接着接合させたものが木質パネルです。高断熱、軽量化に加えて、両面を合板で接着接合させたことがストレススキン効果を生み、高強度の構造材となります。パネル小口には雇い実と雇い溝を作り確実な結合をサポートし、さらに気密を高めるためにパッキン材を装着し、木質パネル相互を南極仕様の金物等で面接合します。この様にして組み立てられた建物は、高気密の一体構造、すなわちモノコック構造となります。外力を建物全体で受け止めることができるので、軽量でもブリザードなどの強風にも十分耐え続けることができます。もう一つのメリットは、組立に特殊な技能を必要としないことです。観測隊員やしらせ乗組員にも建築ができ、誰が建てても品質のばらつきの無い建物が、短期間で完成できます。2018年現在での最新の建物は、「基本観測棟」です。この建物は、気象棟、地学棟、電離層棟、環境科学棟の4棟を統合したもので、延べ床面積416m²の2階建(3層構造)の建物です。特徴的な12角形の建物の平面形状は、ブリザード時のスノードリフト軽減を図るために、風洞実験等により決定されたものです。また、将来の研究活動の変化にも対応できるように、中心部の階段コア以外の間仕切りはフリーとして、大空間が取れるようになっています。12角形のため、一つの内角は150度となりますが、現場で壁同士を150度で正確に接合させることは困難です。そのため、150度の「への字型」集成材柱を製作し、その柱の両端に木質パネルを接合させるパネル&フレーム構造が採用されています。これにより、複雑な12角形の組立作業が単純化され、短工期につながっています。

教育支援プログラム「南極クラス」

ミサワホームグループでは、南極地域観測隊に合計16人(延べ22人)の社員が参加しています(2018年現在)。設営系隊員として、基地の建物建設、維持管理に取り組みます。一方で彼らは、希望していた南極観測隊員になれ、南極に対するそれぞれの夢を叶えることができました。2011年3月11日の東日本大震災では、未曽有の津波により東日本の太平洋岸に多大な被害を及ぼしました。そして被災したその地域、故郷を今後、10年、20年かけて復興していくのは、その地域の子ども達です。あの惨状の中で全てを流されてしまった子ども達に、何とか支援したいと思っても私たちが直接、夢や希望を与えるのはとても難しいことです。ところで私たちには、大人になって夢を叶えた元南極観測隊員の社員がいます。その彼らが、自分の言葉でその経験を子ども達に語ることで、子ども達自身が夢や希望を考えるきっかけを与えられるのではないかと考えました。

南極クラスフロー図 南極クラス ※この活動は、2013年グッドデザイン賞、キッズデザイン賞の両賞を受賞しています。

そこで、国立極地研究所、地域の教育関係団体と連携して産・官・学・地域一体の取組として企画しスタートしたのが、教育支援プログラム「南極クラス」(図1)。現在、南極地域観測隊に参加して帰国した社員は、その後1年間は南極先生として講師役を務めます。小学校、中学校を中心として、2時限の出前授業を北海道から沖縄まで、ご要望があったところに出向いて、直接、元南極地域観測隊員の社員が講演しています。2011年9月からスタートした活動は、2018年度末現在には、述べ1497、約15万9千人の子ども達にお話をしてきました。今後もこの活動を通して、南極観測についての理解を深めていただき、子ども達が自分自身の将来の為に、夢や希望を考えるきっかけを与え続けていきたいと思います。



参考URL

・国立極地研究所 南極観測のホームページ
  https://www.nipr.ac.jp/jare/
・公益財団法人日本極地研究振興会
  http://kyokuchi.or.jp/
・気象庁 南極観測について
  https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku/index.html
・文部科学省 土曜学習応援団
  http://doyo2.mext.go.jp/
・南極クラス
  http://www.eco.misawa.co.jp/antarctic-class/