水滴の下垂と落下を利用した蒸発冷却ルーバーの開発

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背景

夏の暑さが厳しくなる中、住環境、特に冷房機器等が使えない屋外の暑熱適応策が一層求められていると言えます.梅雨がある日本の夏は蒸し暑いことで知られますが,雨量が豊富である一方、暑さが厳しくなる時間帯には相対湿度が低下(飽和水蒸気圧差が増加)することから、屋外の温熱環境を改善する手法として「打ち水」で知られるような蒸発冷却手法の活用が勧められます。 しかし伝統的に行われてきた打ち水は舗装や潅木等足元への散水が中心であるため、涼しさを感じられるほどの効果を期待するためには広い範囲、もしくは対象空間を構成する面をできるだけ多く濡らし、冷却する必要があります。そこでミサワホーム総合研究所では、人が涼しさを感じられる空間を創るために顔の高さまである立ち上げたルーバー(水平格子)を使って立体的に打ち水することを考えました。

ミサワホーム総合研究所が取り組んだ内容・経緯

蒸発冷却手法は、水の気化熱によって濡れた面の温度を下げる手法です。このためできるだけムラなく濡らすことが冷却効果を高めるカギとなります。
しかし水は表面張力によってまとまりやすく、「水みち」として知られるように一度流れた跡をなぞるように流れてしまう性質があります。このため立体的な面を広く濡らすためには水を拡げながら流す工夫が必要となります。
ミサワホーム総合研究所では、2010年頃より光触媒と多孔質材を使って水を濡らし拡げる「クールルーバー」の開発に取り組んできました。クールルーバーはこれまでにない機能性製品であったことから、国等からの補助を受けながら「涼を呼ぶまちづくり」をテーマとした分譲住宅地やバス停、路面電車の駅、オフィスビルのテラス等に採用されてきました(写真1)。しかし製造においては光触媒と多孔質材を塗り重ねる必要があり、エクステリア部品として使うにはコストが高くなってしまうことが課題でした。

写真1 クールルーバー
クールルーバー

具体的な内容

こうした課題を改善するため、2016年からはアルミルーバーの形状を工夫し、水滴が落下する際の衝撃を利用して水を拡げる検討を始めました。また水は表面に露出するほど蒸発しやすく、保水性材料等に比べて蒸発面の温度が低下しやすいことに着目し、たくさんの水滴を下垂させることで冷却効果を高める工夫を行いました。 様々な物の蓋や縁に水滴が下垂する現象は皆様も見たことがあると思いますが、その大きさはある程度決まっていることに気が付きましたでしょうか。直径が何十cmもあるような大きな水滴がぶら下がっているのは見たことがないと思います。というのも、水滴は水の表面張力と重力の吊り合いで決まり、水滴の直径が6~7mmを超えると重力に負けて落ちてしまうのです。それでも水の表面張力が粘るように作用するので、よく見ると水滴がお餅のように伸びた後、約6割が落ち、約4割が下垂した状態で残ります(図1)。

図1 水滴の動き
水滴の動き

こうした水の物理現象を考慮して最適な孔の大きさと間隔を決め、さらにルーバーとして必要な強度を考慮した上で、2017年7月に水滴の下垂と落下を利用した「ドリップルーバー」を開発・発売しました(写真2,図2)。表面処理に頼らない技術を用いることで製造コストを大幅に削減し、冷却機能を持つ製品でありながらデザインルーバー等一般に流通するルーバー並みの価格帯まで下げることができました。

写真2 水滴
水滴

図2 ドリップルーバーの構造
ドリップルーバーの構造

まとめ

近年の夏の暑さは「災害級の暑さ」と言われたことも記憶に新しいと思います。屋内の温熱環境は空調等で改善することができますが、室外機からの排熱は屋外の熱環境を悪化させます。快適な住環境を形成するためには自然のエネルギーを使って屋内外両方に対して取り組むことが重要です。
打ち水が改めて注目されるようになっていますが、再びライフスタイルの中に浸透させるためには、涼しさを感じられるレベルまで冷却効果を高めることの他に、水の効率的な利用、汚れ防止やメンテナンス方法等、併せて考えなければならない課題は多くあります。今回は冷却効果を生むメカニズムの見直しにより製造価格を下げる話が中心でしたが、今後はIoTを使って冷却効果が得られるタイミングで必要最小限の水を流す方法を検討し、水の利用効率とメンテナンス性の向上に取り組んでいきたいと思っています。

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