1.はじめに
2020年のはじめに新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の流行が始まり、2年以上が経過しました。その間、緊急事態宣言の発令やまん延防止等重点措置の発令等に伴い、在宅勤務やリモート授業、帰省・旅行の自粛のため、自宅で過ごす時間が長くなった方が多いと考えられます。在宅時間が長くなったことにより、自宅で使うエネルギー(電気、ガス、水道)量も増加し、光熱費が高くなったと感じられる方も多いのではないでしょうか。
ミサワホーム総合研究所では、より快適で持続可能な住まいづくりに取り組む企業として、COVID-19拡大による住まい方・エネルギーの使い方の変化を把握することは、この先様々な要因で変わりゆくライフスタイルに合わせたエネルギーの効率的な使い方を検討していく上でも重要であると考えました。
そこで、埼玉県熊谷市に所在する戸建分譲住宅地「エムスマートシティ熊谷」を対象に、COVID-19拡大による住まい方の変化についてアンケート調査を行い、合わせて各住戸に設置したHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)で記録したエネルギーデータを分析することで、住まい方・エネルギーの使い方の変化について分析しました。
2.アンケート調査について
2021年7月に、COVID-19拡大による住まい方の変化(※1)についてアンケート調査を実施しました。 アンケートは68世帯を対象とし、46世帯(計162名)から回答を得ました。162名の内訳は、性別は男女ほぼ同数で、年代は50.9%が30~40歳代、41.4%が10歳未満となっており、職業は36.3%が会社員、16.9%が専業主婦・パートアルバイト、41.9%が小学生・未就学児、と比較的若い世帯が多いことが特徴です。
在宅時間が増えた人の割合は月別で最大70%
COVID-19拡大後の2020年度の各月において2019年度同月と比較した在宅時間の増減について聞いたところ、平日の在宅時間は年間を通して約半数が「増えた」「やや増えた」と回答し、特に緊急事態宣言が埼玉県に最初に発令された4、5月は約7割が「増えた」「やや増えた」と回答しました(図1)。また、休日は年間を通して約7割が「増えた」「やや増えた」と回答しました。
自宅での昼食・夕食の回数が増加
同様に2020年度の自宅での食事(朝食、昼食、夕食)の回数の増減について聞いたところ、朝食の回数は104名(86.7%)が「変わらない」と回答しました。それに対して、昼食の回数は53名(44.2%)、夕食の回数は52名(43.7%)が「増えた」または「やや増えた」と回答しました。
朝食については、元々自宅で召し上がる方が多い一方で、昼食・夕食については、職場や学校、飲食店などでの食事機会が減少したため、自宅での食事の回数が増加したと推測されます。
在宅時の使用頻度の高い家電類は娯楽家電類、空調家電類、在宅勤務等に係る家電類
在宅時間が延びた42世帯を対象に、使用時間・頻度が延びたと感じる家電機器類について聞いた結果を(図2)に示します。
これを項目別に集計したところ、41.3%がテレビ、ゲーム機などの娯楽家電類、25.0%が冷暖房設備、空気清浄器などの空調家電類、17.9%がノートPC、照明設備などの在宅勤務等に係る家電類となりました。外出の自粛で空いた時間は娯楽の時間に充てられることが多く、在宅時間が延びたことで空調利用が増加したと推測されます。
3.HEMSデータ分析について
2019年4月から2021年3月までのHEMSで取得したエネルギーデータ(消費電力量、水道使用量、ガス使用量、エネファーム発電量)を用いて、2019年度をCOVID-19拡大前とし、2020年度を拡大後として、前後のエネルギー使用量の変化を分析しました。
3-1.対象世帯全体の変化
対象世帯全体のエネルギー使用量は増加傾向
対象26世帯全体の年度別エネルギー合計量の変化を確認したところ、2020年度は2019年度と比較して、消費電力量は11.7%(16.0GWh)、水道使用量は10.1%(588.1㎥)、ガス使用量は8.8%(1,732.8㎥)増加しました。消費電力量に応じて発電・停止するエネファームの発電量も6.8%(3.2GWh)増加しています。以上より、対象世帯全体でエネルギー需要量が増加していることが分かりました。
在宅での生活が多い世帯で消費電力量の増加が顕著
在宅時間の変化が消費電力量に及ぼす影響を確認するために、アンケート調査で得られた在宅時間の変化を基に世帯ごとの在宅時間の変化量を求め、26世帯中、増加の大きい上位12世帯を在宅時間の増加が大きいグループ(Group1)、下位14世帯を在宅時間の増加が小さいグループ(Group2)としまた。緊急事態宣言が初めて発令され、住まい方の変化が顕著であると考えられる4月の消費電力量の時刻別平均値を見ると、Group1では、9時から18時にかけて20~70%(100Wh~240Wh)増加しています。一方でGroup2では、同時刻帯での増加が30%(100Wh)程度に留まっています(図3)。
以上から、在宅時間の変化は消費電力量の変化に影響を及ぼした可能性が高いことが分かります。
3-2.邸別の変化
居間・台所での消費電力量および食事に係るエネルギー使用量が増加
具体的にどのようなエネルギー消費の変化が起きているかを分析するために、在宅時間が延びたこと、在宅勤務をされたことが伺える一世帯を抽出し2019年度と2020年度を比較しました。
4月のエネルギーデータを見ると、宅内の消費電力量が9時から20時にかけて時刻あたり最大57.9%(300.7Wh)増加しています(図4)。
また、水道使用量は昼食・夕食時を中心とした11時から18時に増加しており、時刻あたり最大で168.5%(71.0L)増加しています(図5)。
また、ガス使用量(調理・給湯使用分)も、昼食・夕食時を中心とした11時から20時に増加しており、時刻あたり最大で200.0%(0.12㎥)増加しています。(図6)
対象世帯のアンケート結果によると自宅での昼食・夕食の回数が増加していることから、その影響を受けた可能性が高いことが推測されます。 また、回路別の消費電力量の時刻別平均値を確認したところ、リビング・ダイニング及び洋間全体では9時~17時に増加しており、その間の合計で98.2%(77.2Wh)増加しています(図7)。
アンケートでは娯楽家電類や在宅勤務に係る家電類の使用時間・頻度が延びたと回答していることから、その影響を受けた可能性が高いことが推測されます(図8)。
また、食事に係る回路(台所、冷蔵庫、食器洗浄機)を確認すると、昼食・夕食時の増加が顕著で、その間の合計で106.2%(206.6Wh)増加しています。
以上より、自宅での食事の回数の増加が消費電力量の増加にも影響を及ぼしている可能性が高いことが推測されます。
4.まとめ
本レポートでは、COVID-19拡大後の住まい方・エネルギーの使い方の変化を分析した結果を紹介しました。COVID-19拡大後は、在宅時間、自宅での食事の回数、家電機器類の使用頻度などの住まい方の変化が確認され、それらに影響を受けると推測される時間帯、回路のエネルギー使用量の変化も確認されました。
今後は、得られた結果を用いて、多様な生活様式に合った空調・家電機器類の最適な使い方と、太陽光発電、家庭用燃料電池、蓄電池等により宅内で発電した電力の最適な使い方を検討し、更に省エネで光熱費を抑えた家づくりを進めていく予定です。
- ※1 在宅時間の変化、自宅での食事の回数の変化、在宅時間が延びた世帯には利用頻度・時間が延びた家電機器類、等を調査。
関連リンク:LinkGates(リンクゲイツ) | ミサワホームのIoT住宅 (misawa.co.jp)
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