超高齢社会における都市近郊の空き家問題

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人口減少時代が抱える課題の一つとして住宅余りが指摘されています。2013年の総務省の住宅・土地統計調査によると、全国での空き家は820万戸となっており増加の一途をたどっています。民間調査機関の予測では2033年に約2,170万戸となり、空き家率は2013年の13.5%から30.4%にまで上昇するとも言われています。現時点では空き家解消の有効な手段は見つかっておらず、今後発生する空き家により地域の魅力が低下し、住宅自体が優良であっても、住宅の資産価値の低下が想定されます。空き家発生のメカニズムは複雑ですが、主なところで以下の3つの問題と捉えられます。

  1. ①. 需要と供給のバランスが崩れているという市場の問題
  2. ②. 核家族向け住宅における担い手の問題
  3. ③. 住宅不足時代の税施策である固定資産税の軽減などによる税施策の問題

これら諸問題は一つだけ解決しても効果を得られない可能性が高く、上記の課題を解決したとしても、空き家の多発が想定される高齢化した住宅地などでは、それぞれの地域で安心して暮らせるための地域内コミュニティが正常に機能しているかどうかという問題も懸念されます。これらの状況を受けて、住宅を供給してきたハウスメーカーとして何をすべきなのか、建物というハードだけではなく、生活者のライフスタイルも提案してきたハウスメーカーは解を模索していく必要があります。

「家」という概念の変化

地方における空き家問題のように人口減少が直接的な原因である場合、担い手がそもそも居ないという問題に直面しますが、主に都市部における空き家問題の場合は「都市部の家」という構造的かつ歴史的な問題を孕んでいます。
ハウスメーカーをはじめとした住宅供給会社は戦後の持ち家施策を通じて核家族のための新築庭付き一戸建てを主として供給してきました。地方から都市部へ流入してきた人たちが独立して家を持つという、当時「住宅双六」という表現の中での「上がり」として広く認識されていました。これは一つの家に住んでいた「家族」の分家であり、「実家」の誕生も意味します。都市部で家を持った人の多くは「実家」と「都市部の家」の二つの「家」を持つことになります。担い手は住む場所のどちらか一つを選択する必要があるため、必ず一方の家は担い手を失うという構造的問題が存在するのです。
また、都市部郊外に発生した住宅地の場合は、家に求められる機能が変化しました。かつての家は「屋号」に表されるような職住一体型が多くみられましたが、仕事を求めて都市部に出てきた人達は、郊外の住宅地に住み、都心の職場へと通勤するスタイルでした。つまり、住宅地の家には、仕事をする場所という職の機能がなく、休む機能に絞られたという特徴が生まれました。このような家族の子どもは、家業を引き継ぐことがないため外に出ていく傾向があります。職=仕事する場所と家がリンクしていないため、子世代は土地・家に縛られる必要がなくなりました。
次に、家制度家長、長子相続等に代表される明治時代から継承された社会制度としての「家」の概念、いわゆる家=家系(一族、血筋)という概念の捉え方が大きく変化したという歴史的な問題があります。戦後に家制度がなくなって時間が経っても、人々の意識内には家=家系を継がなければならないという意識が長らく残っていました。しかし、時代の流れとともに誰かが「家」を継がなければならないという意識は薄れつつあります。その流れは同時に、自他ともに認める家を引き継ぐ責任者がいなくなっていく流れでもあり、こうした機能や意識の変化が担い手を失わせ、「家」という概念・価値が単なる『土地』と『建物』になっていきました。それ故に、家の価値は単なる不動産価値になっています。

家・住まいを引き継いでいく担い手

先に挙げた空き家の問題として②の担い手には、市場と血縁関係の2通りがあります。
1つ目の市場の担い手は、主に土地・家を売却する場合ですが、立地条件と土地自体の持つ条件(接道や土地形状、インフラ状況など)が良ければすぐに次の担い手は見つかり、家・住まい、そして地域の価値は保たれます。しかし、立地条件等がよい土地・家であっても、所有者が引き継ぐ方針を予め決めていない場合は、すぐに売却できず、空き家の状態が続いてしまう可能性があります。決まった人が引き継ぐだろうという共通認識が相続者間にもないため、多くの場合、相続が発生してから土地・家の財産をどのように分けるか相続関係者が協議することになるのです。所有者の生前に相続関係者が協議し納得できる方針を決めておくこともができますが、これは所有者が亡くなることを前提に話を始めることになるので、相続する側(引き継ぐ側)は取組みづらいのです。そのため、予め所有者であり被相続人となる人が先導して方針を決めることが重要でしょう。
2つ目は、家を血縁関係で引き継ぐ場合です。これらは立地・土地条件などとは関係なく、持続的に家族等が引き継いでいくものです。代々子孫が住み継げば、空き家にはなりません。現代住宅で例えると二世帯・三世代住宅などは、多世帯・多世代での居住を志向しているため次世代の担い手のことも想定できます。元々二世帯住宅、特に都市部の二世帯住宅は、高度成長期に土地が高騰しすぎて取得負担が高くなったため、親世帯と土地を共有し、一つの住まいの中でそれぞれの世帯が独立した居住スタイルとして生まれました。しかし、今日再び二世帯・三世代住宅が注目を集めているのは、共働き子育て世帯のニーズだけでなく、核家族の住宅では様々な変化に対応できないために、必然的に二世帯・三世代住宅が増えているとも考える事ができます。

都市近郊を対象に「住まいの意向調査」を実施

では、既に都市近郊で住宅を所有している人々は、自分の家をどうしていきたいのでしょうか。その意向を調べるために、ミサワホーム総合研究所では、都市近郊の自治体である東京都調布市と共同で「住まいの意向調査」※を実施しました。この調査では、住宅を所有した方々が当初の目的の子育てを終えた後にどのような意向をもっているかを調べるために、子育てに一段落した世帯(主に築15年以上の世帯)を中心にアンケートを行いました。

その結果、所有している家について「10〜20年後子どもや親族が住み続ける見通しがある」と答えた回答は約7割、「見通しがない」と答えた回答が3割となり、空き家になる可能性が高い物件が約1/3あることがわかりました。このうち、見通しが立たない理由で最も多かったのは「子・親族等、みな既に住宅を保有」という回答で63.8%でした。次に多かったのが「子・親族等が遠地で居住・就業しているため」で17.4%であり、これらは親の住宅を血縁関係で積極的に引き継いでいけない事情がうかがえます。

興味深いのは、将来同居する構成を聞いたところ、「兄弟姉妹のみ」との回答がわずかながらも見られました。これは少子化や核家族の進展により、高齢単身世帯が多くなったため新たな暮らし方を想定している人が出現し始めているという点で注目すべきでしょう。この結果を踏まえると、引き継いでいく担い手を獲得できる家とは、様々な形態の世帯が住むことや変化する家族形態に対応できる家が有効だと考えられます。
しかし、現在一般的に建築されている住宅は核家族が生活することだけに特化してきており、住宅空間はそれ以外の無駄な部分を省いてきたというハードの問題があり、住み継がれる住宅を考え、取り組む上での障害になると考えられます。現代住宅はコストパフォーマンスを追求するあまり、客間、応接室、廊下、和室など、家族が日々の生活を送るための必須の機能ではない場所を次々に省いています。その結果、日常的に使っている家族以外の他者には居心地が悪く、長居できるような居場所がなくなっています。すなわち、現代住宅の多くは特定の時期の特定の家族のためだけの家になっている可能性が高く、住まい手の多様化する意向をハード=家の形が阻害してしまい、叶えられずにいるのではないかとも想像できます。
住み継がれるには今後、家が核家族に特化してきた内容をもう一度捉えなおし、余白的なパブリック空間とプライベート空間をリ・デザインし、様々な家族や人が生活の中で交流できるようにする必要があると考えられます。単身高齢世帯が増大し、子どものいない又は少ない世帯は当然、独居高齢者になる可能性が高くなります。高齢期で単世帯になった場合は再び、兄弟姉妹で共同生活ができるとか、親戚の子世帯と一緒に暮らすなどといった子や孫だけでなく幅広く血縁関係をつないで住まえるような家になれば、利用価値は高まり、引き継がれていくと同時に、次の担い手も獲得できるのではないでしょうか。

地域の価値を上げる地域のための家

<写真1:カフェのエントランスは普通の玄関をそのまま利用している>

地方、または都市近郊の大規模ニュータウンや旧来の商店街、空き家が目立つ古い団地では、既に地域を活性化して暮らしを豊かにしようと様々な取組がされています。
例えば地域の人が交流できる「コミュニティ・カフェ」や子育てしやすくするための「子育てシェア・支援スペース」、地域で働く場としての空間を設けて働く人を呼び込む「シェアオフィス」などがあげられます。

<写真2:アットホームで開放的なリビングからは四季折々の花が楽しめる>

住まいをまちの拠点・地域コミュニティの拠点として活用する取り組みは、地域で豊かに暮らせるという住宅街の価値、地域の価値を維持するための新たな住まい方、コミュニティづくりとして注目されています。
戦後、都市近郊の住宅地では人々が入れ替わり、見知らぬ者同士で暮らす街では地域コミュニティによるサポートが存在せず、必然的に行政がその役割を担ってきました。そのため、昔から地域コミュニティが担っていたしつけや子育て、見守りなどを地域住民同士で協力して支え合う住民意識が育たず、行政サービスを消費するというスタンスにならざるを得ませんでした。しかし、人口減少時代では行政サービスが行き渡らず、コミュニティの重要性は高まっていますが、その担い手は育っていません。そのような中で、子育て等、住宅が担う機能を終えた住宅をまちの拠点として活用している事例が注目されているのです。
ミサワホームの入居者でも、子育てを終えた所有者が自宅を地域のつながりをつくる場所にしたいと思い、カフェを開いた事例がありました。当初はあまり人と人がつながりませんでしたが、イベント等様々な取り組みを続けていくうちに地域の方が利用し始め、住人同士のつながりが生まれたと言います(写真1,2)。
地域全体が高齢化し、住民同士のつながりが薄れた住宅地は、行政サービスが行き届かなくなる事で住みにくくなり、地域の価値が落ちていく。このような問題に対しては、地域コミュニティを支える「場」が住宅地やまちの価値向上に欠かせない存在になっていくと考えられますが、どの程度担い手がいるでしょうか。
前述した調査では、自宅を地域のコミュニティに提供する意向を聞いたところ、約8%が興味あるとの回答がありました。

年代別に見ると70代では5%と下がるものの、40代から60代までは12%と平均を上回っており、アクティブシニア層がこれらの担い手として鍵を担っていると考えられます。終の棲家として獲得した個人所有の住宅を自分のためだけのスペースではなく地域のコミュニティために提供するということは、今までの消費者意識では考えられないものです。絶対数は少ないとはいえ、1割弱の人に、住まいの価値を単なる資産活用というお金に換算する利用方法ではなく、今まで見過ごされてきた地域への貢献、地域コミュニティの醸成に結びつけたいと考えている姿が浮かび上がりました。この調査結果は、全国それぞれの地域に利用できないかもしれません。ただし、都市近郊の既存住宅地における一つの物差しとなる可能性を秘めています。

人生100年時代のライフコースと住宅利活用モデル

都市近郊の住宅地は戦後の新しいライフスタイルを実現しながら社会を担ってきた核家族のモデル地域と言っても過言ではありません。分割、分家されて出現した核家族モデル、それによって生み出された家・まち、そして、それらがどのように家を引き継がれていくのか、それとも空き家により地域の価値が大きく損なわれ、衰退していくのかという問題は、空き家問題を抱える全国数多の都市部近傍地域の共通課題です。
空き家問題の解決方法には、ハード的とソフト的な側面があります。ハード的側面では、子育て世帯しか住めないような住宅ではなく、多種多様な人達が寄り添って暮らせるような建築的工夫が凝らされた家だと言えます。さらに世帯構成が多様化していく今後、前述したような新たな住まい方である兄弟姉妹のみで住むという新たな複合世帯モデルや、地域のコミュニティを醸成する拠点とするして公民館ならぬ「交民家」モデルなどのように住宅の利活用のバリエーションは増えていくと予測されます。このような新たな担い手に対応できる家にリ・デザインすることは多様な引き継ぎ手(所有者)、担い手(運営者)を獲得する上で有効だと考えられます。

<写真3:GENIUS GATE 「コミュニケーションポーチ」>

このテーマについて、ミサワホームでは住みながらまちに開く新しい住宅モデルとしてを2013年に『GENIUS GATE』という商品でを発売しました。世帯・世代間の交流を生み出すプランニングや地域に開かれた「場」の提案、長く住み続けられる工夫などを随所に盛り込んでいます。完全二世帯住宅型にすることでプライバシーに配慮しながらも、家族や近隣、地域とつながり交わる空間を作り出す工夫を取り入れた住まいを実現したものです。
次に、ソフト的側面の解決方法は、使い手の意識変革とシステム的なアプローチです。現在は人生100年時代と呼ばれ、今までとは違った働き方、社会での役割が求められています。住宅は既に100年住宅というほど耐久性やメンテナンスの仕組みも提案・構築されており、ミサワホームでも100年住宅をCHS(ベターリビングのセンチュリーハウジングシステム認証)をベースにして1990年代に発売しています。今までの住宅取得の流れは、「庭付き一戸建て」が最終的ゴールとされている住宅双六のライフコースでしたが、人生100年時代にあっては住宅取得がゴールではなく、住宅取得の後をどのように暮らし、また、子育てを終えた家族がどのように住宅を住みこなしていくのかが重要となります。
また、人生100年時代に対応した住宅の資産価値の維持は、「100年間、住宅を活用できる社会」へと意識を変化させていくことで、地域社会での人と家との役割が明確にできるのかもしれません。100年間対応できるような住宅ストックを活かすには、生活をさらに快適で便利にする機能を住宅に付加していくことと構造とメンテナンスの仕組みにより長寿命化することが重要になってきます。そのときに重要になるのは、それらの仕組みを担う人手であり、併せてこれから加速する人口減少・超高齢化社会に合わせて手間を無くすような自動化テクノロジーです。AI(人工知能)や、IoT(Internet Of Things)など、CPS(Cyber Physical System=センサーデータなどリアルな情報を集めて分析・解析し、機械や人、社会に反映させる)の技術、製品の革新が進み、連動するサービスなどが成功の鍵を担っています。
一般市場には既にスマートスピーカーや見守りカメラなど、様々な製品が発売されていますが、現在は製品ごとにコントロールしており、まだ多くの機器との連携は取れていません。しかし、今後は設備機器連携が当たり前になり、家電も含め様々なものがつながっていくでしょう。その時重要になってくるのは様々なサービス提供者のシステムが連携することによるシステムトラブルやセキュリティであり、悪用されないような仕組みや枠組みです。ミサワホーム総合研究所でもそのような事態にいち早く対応すべく、スマートハウスにおける設備機器の相互連携における安全を確保するために機能安全規格を設計、策定する国家プロジェクトに参画し、安心・安全な住生活の実現を目指すと同時に、住宅内の膨大なデータが産業の壁を超えた価値あるサービスの創出につながるよう研究を続けています。

高度成長期の日本を支えた住宅双六モデルは、人生100年時代という超高齢化社会を迎えて新たなモデルが求められています。地域に必要な家が社会資産であるとすれば、個人の住宅が社会に供する公民館ならぬ「交民家」として住宅双六の次を担うことで、地域も個人も豊かな人生を歩める可能性があります。提供する所有者が生きがいを感じ、高齢者を見守り、人々をつないでいくような拠点や、見守り機能付きの子どものたまり場となるモデルなど、行政と個人が新たな役割分担で協力し合う「場」が増えていけば、都市近郊の空き家問題の解消も実現できるかもしれません。


※参考:住まいの意向調査

  • 実施期間:2018年7月〜8月
  • 調査対象:ミサワホームの戸建住宅を購入し入居15年以上の入居者及び
    ミサワリフォームで工事をした物件所有者
  • 調査地域:東京都調布市
  • 調査方法:訪問配布・郵送回収方式
  • 配布・回収:訪問:816 :229(回収率28%)
  • 有効回答:228
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