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自宅で暮らし続けるための早めのリフォーム
~住まいの継承へ~

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はじめに

社会問題のなかで人口(特に生産年齢人口)の減少、超高齢社会、これから迎える多死社会に加え、また人生100年時代と言われる中、自宅での豊かな暮らしを実現するためには、今一度住まいとその背後にある現状を見つめ直し、現在解決すべき問題を明らかにする必要があると考えます。本レポートでは、住まいを継承していく上でのポイントを紹介します。

■ 自宅に住み続けるのか

1.健康に住み続けられるのか

健康への意識は、年齢が若い時は自分や家族、友人が病気になった時に強くなるものです。やがて子育て期を経て年齢が上がるに従い、時折からだの調子が悪くなることや、健康診断の結果などにより、それまでの何気ない日常生活から、より健康を意識した生活を考え始めるのではないでしょうか。

健康的なからだづくりには栄養バランスのと れた食事、適度な運動、十分な睡眠が重要と言われています。住まいから健康を考える場合は、建物基本性能(温熱環境特に室間温度差、空気質、インテリア、光、音)を高めて 「健康リスク」を低減することが考えられます。

2.ライフステージと住まいの安全性

住まいの中での安全配慮としては「子育て期」は子どもの転落・熱傷・誤飲・溺水・はさむ・窒息・切傷・打撲などが家庭内事故対策の中心になります。「成人期」は不注意からの転倒や怪我などになり、「高齢期」になると今まで気にもしていなかった平坦な床での転倒や、浴室でのヒー トショックなどから 誘発される溺水※1、室内での熱中症※2などが加わってきます。また身体能力の低下により、玄関から道路までの高低差や床の凹凸などが気になるようになります。こうしたことは日常生活の行動、特に入浴や外出する事への気持ちの妨げになり、狭まった活動範囲は生活の質を低下させることにつながります。身体能力の低下により他者の介助が必要になると、地域の介護・ 医療などの外部サービスや社会資源を利用して自宅に 住み続けることになります。状況によっては、自分の意志とは別にわが家が「終の棲家」でなくなり住み替えの選択が必要になるケースも少なくありません。

3.自然災害の安全性

地震の場合、大きな耐震基準改正があった1981年以前に建てられた木造住宅は現行基準に比べ耐震性が低く、大地震で倒壊す る可能性が高くなります。まずは耐震診断の実施・判定の上で適切な対応が必要になります。自然災害(地震、水害、風害、雪害など)で避難が必要になった時に部屋の中から家の外、そして道路までの円滑な避難経路が確保できることが重要になります。余儀なく在宅避難になった時には災害で寸断されたインフラが復旧するまでの電気・水の確保、備蓄品の収納場所が必要になります。自然災害が多い現状では住まいは「生き延びるため」のシェルターの機能も求められています。

■ 家は住み継がれるのか一社会的背景

1.高齢化と家族関係の変容

日本の急激な高齢化の背景には医学の進歩、公衆衛生の発展、国民の健康意識、日本特有の食生活、生活改善などのさまざまな要因があり、その結果、主に死亡率の低下による裔齢者の増加と急速な「長寿化」をもたらしました。家族のライフサイクル関係図(図1)に示すように、長寿化による本人の介護期と子どもの晩婚化などによる子育て期が重なることで、ダブルケア問題※3相続時期の後退による相続者の高齢化、経済要因などにより放置された空き家の老朽化(防災・治安・風紀)が問題になっています。

2.家族関係の変容(問題)

今日の「空き家問題」は家族関係の変容の現実を顕在化している具体例とも言えます。表には語られていない昔の 「家父長制度」や 「長子相続」の考え方は世代によって、また家族、地域において根強く残るところもあります。また親は自分たちの家に資産価値があり、きっと子ども達が引き継ぐだろう、あるいは相続して売却できるだろうと認識している方が少なくありません。就職や結婚などで子どもが実家に戻らないと決めた時から「実家の空き家化」は始まっています。

3.住まいの資産価値・立地

裔度成長期の時代、「家を持つこと」は結婚と子育て、老後の安定、不動産資産の形成に結び付き、人生の安全安心を支えるものとみなされ、日本社会を支えたモデルになりました。現代においては、本人が認識している家の資産価値は不動産市場における価値とは必ずしも一致していない場合が多く、築年数が経つほど土地の価値だけが残る事になります。

■ 人生100年時代へ「自宅に住み続けること」から考える

内閣府の調査によると、高齢者の65.1%は、身体機能が低下して車椅子や介助が必要になった場合でも自宅に住みたいと考えて います※4。若い時はなりゆきまかせに時を経るだけで済んでいた住まいが、自分の身体の変化にあっていないと思った時には、何か手を打つにしても、資金や時期の面ですでに手遅れ状態ということになりかねません。そのようにならないためには、子育てが終わる段階で「現在の住まいとライフステージ・ライフスタイルがマッチしているか」、また「今後この住まいで暮らし続けた場合どのような事が起こるか」を想定する事が望まれます。そこで見えてきた問題を先送りせず、「自分自身が快適であること、家族のライフサイクルを見極めること、周辺の社会資源 (医療、介護、近隣など)を有効に活用すること」を念頭に置き、自宅で豊かに暮らしを続けるための住まいの問題解決を検討する必要があります。

■ 住み続けるために「そなえる」

ミサワホームでは子ども期→成人期→高齢期の人生を10のステージに分け、「状況の変化にも的確に対応できる柔軟性を持つ」 「安心して住める安全なシェルターを追求する」「時と共に成熟する豊かな地域をつくる」 「人間本来の能力を生かした暮らしを支える」「人がつながり支え合う暮らしをつくる」 「元気に生き人生を謳歌する」など、それぞれの段階での快適な暮らしを実現する事を提唱しています。

リフォーム提案として安全•安心に住み続け、暮らしをより豊かにする「カラダとココロのウェルネスリフォーム」は、「健康リスク※5の低減と毎日を楽しむ暮らし」をテーマに、住まいの基本性能を高めて「カラダ健やか性能」を追及しています。「そなえるプラン」は今後おこる可能性を考慮し、「その時が来たら、役に立てる」2 段階配慮設計で寝室、トイレ、浴室の水廻りの隣接化や将来の身体変化にそなえ対応した提案を行っています。

(図2) 「防災・減災リフォーム」は、平常時・災害時・災害後のいずれにおいても安全•安心な暮らしを支えるための住まいのソリューション「MISAWA-LCP※6」を策定し、レジリエンスく強靭さ・回復力>な住まいにリフォームする提案です。

■ ライフステージにあった適切な維持管理とそなえが住まいの価値を継続する

「子育て期」「高齢期」を経験した住まいは、人の生活の知恵とリフォームによるノウハウが蓄積された住まいに育てあげられています。 現代の最先端技術を取り込み、長期のライフステージに合わせ「性能を維持する継続的なリフォ ーム」と 「暮らしをより豊かにするためのリフォ ーム」によって育てられた住まいは、やがて継承する時には「住み継がれる価値のある社会ストック」として位置付けられます。今、時代に即した住まいへの柔軟な思考が必要とされています。




引用文献及び注釈

※1東京消防庁防災部防災安全課「救急搬送データからみる日常生活事故の実態 平成30年」
p.20図2-3年齢別の事故の種類別構成割合(ころぶ、落ちる、その他、不明を除く)
※2同上 熱中症による緊急搬送 p.11図13過去5年間(各年6月~9月)の年齢層別の救急搬送人
※3「ダブルケア」とは、「介護」と「子育て」といったように、家族や親族など複数のケアに携わることを指す言葉です。言葉は、横浜国立大学大学院教授相馬直子氏及び英国ブリストル大学上級講師山下順子氏が名付けました。
※4内閣府「第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果 平成27年度」
※5ミサワホームの考える健康リスクとは・冬季の室温の低下が原因となる血圧の上昇・結露などを原因とする アレルギー物質の発生・空気汚染物質の室内への侵入・冬季のヒートショック・家庭内の事故を指します。
※6MISAWA-LCP:サワホームが住宅を提供する際に用いる自然災害に対するソリューション。LCPはLife Continuity Performanceの略語であり、災害後の生活継続性能を意味する言葉である。