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ミサワホーム総合研究所が考えるこれからのウェルネスソリューション

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はじめに

厚生労働省1)によれば、日本人の平均寿命は女性で87.26歳、男性で81.09歳(2018年時点)であり、年々延び続けています。また平均寿命とは別に、近年“健康寿命”という言葉もよく使用されるようになってきています。“健康寿命”とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」2)と定義されています。日本人の平均寿命が年々延びていく中、健康日本213)により、平均寿命と健康寿命の差を縮小し、“健康寿命”を延伸させることが掲げられています。

「健康」とは?

健康寿命の延伸が叫ばれる一方で、「健康」とはどのような状態をさすのでしょうか。現在当たり前のように使用している「健康」という言葉は、明治時代での西洋医学の導入と共に新たに作られ、広く使用されるようになったといわれています4)。例えば江戸時代の儒学者・貝原益軒が著した「養生訓」5)の原文を見ると、健康という語は使用されておらず、「健やか」「丈夫」という言葉が多く目に入ってきます。「健やか」「丈夫」であるかどうかは、感覚的・主観的な判断で決められるものであり、西洋医学での客観的な判断に基づくものと区別するために、新たに「健康」という言葉が求められた背景があるようです。なお、WHO世界保健機関憲章6)では、「健康」とは身体的かつ精神的・社会的にも良好な状態であることをいい、単に疾病がないこと、病弱ではないことを意味するものではないと定義されています。明治期以前の心身のあり方に対する考え方、明治以降に導入された西洋医学の考え方、現在までを振り返り、改めて「健康」は多義にわたるものといえます。そして健康寿命とは、客観的に病気がない期間とは限らず、感覚的・主観的な判断で決まる側面があることを改めて指摘したいと思います。

住宅業界における健康関連サービスの動向

図1は、住宅メーカーにおける健康関連商品・サービス(2015年時点)についてまとめたマトリクスです。実用価値(実用性)が高く、生命の保持の観点における基本性能に関するもの、すなわち「身体的に良好な状態」に寄与するものへ集中していることがわかります(図1,左下部分)。具体的には、怪我や事故などの予防・安全対策に関するもの、ヒートショックなどの温熱ストレス対策に関するもの、換気や空気質、VOC対策など生理ストレス対策に関するものです。住宅業界において、現状は健康のうち「身体的に良好な状態」へ寄与する提案が多く、「精神的・社会的にも良好な状態」に寄与する空間提案が空白地帯であることが読み取れます。
住宅メーカーの健康関連サービス(2015)
図1 住宅メーカーの健康関連サービス(2015)

住まい・建築環境の健康度に関する評価指標

住まい・建築環境の健康度に関する評価指標に、一般社団法人日本サスティナブル建築協会による「CASBEE健康チェックリスト」7)、IWB I(International WELL Building Institute)による「WELL Building Standard TM」(WELL認証)8)があります。いずれも研究成果などの科学的エビデンスに基づき、健康に寄与する空間環境のあり方を提示しています。
「CASBEE健康チェックリスト」では、居間・リビングやキッチンなどの居室別に、①暖かさ・涼しさ②静かさ③明るさ④清潔さ⑤安全⑥安心の6項目を健康要素として、住まいの健康度を採点、評価し、住み手に住まい方の改善を促す仕組みです。住まいという物的環境が、そこで住む人の健康に悪い影響を与える負の要素を減らすことで、主に身体的な健康に寄与する取り組みと言えます。
また「WELL Building Standard TM」(WELL v2)8) 9)では、①AIR(空気)②WATER(水)、③NOURISHMENT(食物)④LIGHT(光)⑤MOVEMENT(活動)⑥THERMAL COMFORT(温熱快適性)⑦SOUND(音)⑧MATERIALS(材料)⑨MIND(こころ)⑩COMYUNITY(コミュニティ)の10のコンセプト(評価項目)から構成され、項目ごとに要件が具体的かつ詳細に示されています。

住まいが人の“健康”に果たす役割

これからの住まいは、ヒートショックの予防や家庭内事故や災害から身を守るなどの身体的な健康に加え、幸福感や心地よさといった、住空間が人の気持ちや気分に与える側面、すなわち心理的な健康にも力を入れることが必要であるといえます。そこでミサワホーム総合研究所では、「身体的に良好な状態」を支える空間=「からだ」が健やかであることを基礎として、生活場面において、より「心地よい」「気持ちいい」「ほっとする」などのポジティブな気分、気持ちになれる場面を増やす空間=「こころ」の豊かさを築くことを狙いたいと考えています(図2)。各ライフステージにおいて、居住者の潜在能力を高め、より活き活きと充実した暮らしを実現するための空間デザイン・コミュニケーションツールを現在開発しています。最後に、ミサワホーム総合研究所のウェルネス・クレドを宣言し、話を終えたいと思います。

ミサワホーム総合研究所のウェルネス概念図
図2 ミサワホーム総合研究所のウェルネス概念図

【ミサワホーム総合研究所のウェルネス・クレド】

1.一人ひとりのWell-beingを大切にする
2.身体的な健康だけでなく、幸福感や心地よさ、気持ちよさといった、心理的なもの、前向きな気持になれる空間を追求します。
3.現在を楽しみながら、家族の変化に対応し、一生、安全安心に住み続けられる
4.家族や仲間、地域、近所とのつながりと個のプライバシーのバランス・調和の取れた環境を目指します。

注1) 「平均寿命」は、0歳の平均余命であり、死亡年齢の平均ではない。簡易生命表より、年齢毎にあと何年生きられるか、期待値が示されている。厚生労働省ホームページ,平成29年簡易生命表の概況,https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/dl/life17-02.pdf(参照日:2018.12.18)
注2) 厚生労働省ホームページ,平成26年版厚生労働白書,図表3-1-4  健康寿命の定義と平均寿命との差,https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14/backdata/1-3-1-04.html(参照日:2018.12.18)
注3) 2000年~2012年を第一次とし、2013年より第二次期間に入っている。 http://www.kenkounippon21.gr.jp/index.html(参照日:2018.12.18)
注4) 北澤一利著,『健康』の日本史,平凡社新書,2000年
注5) 貝原益軒著,伊藤友信訳,養生訓 全現代語訳,講談社学術文庫,1982年
注6) 外務省ホームページ,世界保健機関憲章,https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000026609.pdf(参照日:2018.12.18)
注7) 一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構 (IBEC)ホームページ, CASBEE健康チェックリスト,http://www.ibec.or.jp/CASBEE/casbee_health/index_health.htm(参照日:2018.12.18)
注8) WELL認証の評価基準に関する解説は WELL Building Standard v2 (Japanese)を参照,https://www.wellcertified.com/node/5056(参照日:2018.12.18)
注9) 一般社団法人グリーンビルディングジャパンホームページ,WELLとは,https://www.gbj.or.jp/well/about_well/(参照日:2018.12.18)