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家のある風景 Vol.01 アルルのローマ遺跡と旧市街

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ミサワホーム総合研究所は、住まい方からまちづくりまで、暮らしに関する様々な住文化情報の研究・発信を行っています。
研究員の大谷は、世界各地の歴史的な都市やまちを訪れ、その情緒ある景観を透明水彩の素朴なタッチで描き留めてきました。歳月を重ねた暮らしの中から醸し出される魅力を、その場所が持つ住文化や伝統に纏わるエピソードと共にご紹介します。

 南仏の地中海に臨むアルル。旧市街の建物はどれも地元で採れる石材によって造られています。屋根も同様に地元の土で焼かれた瓦で葺かれて、まち全体が一つの塊に見えるほどです。建物に嵌め込まれた窓や鎧戸は、そのほとんどが意外にも木製。長い年月の風雨に耐え幾層にも塗り重ねられたカラフルで味わいのある佇まいが、爽やかな地中海の陽射しの下、楽しげに語りかけてきます。

 アルルは古代ローマ時代より海洋貿易の拠点として繁栄しましたが、19世紀になると急速に衰退していきました。一見不幸な出来事ですが、かえって近代化の波を受けずに遺跡が壊されることなく保存されました。この絵にある円形闘技場も市民によって守られ、現在も使い続けられています。「屋根のない博物館」とも呼べる旧市街は世界遺産に登録され、画家のヴィンセント・ファン・ゴッホが滞在し、多くの作品を残しました。世界経済の流れから取り残されたことが、結果として都市の魅力につながるとは興味深いですね。

(画・文 大谷宗之)

 

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