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家のある風景 Vol.02 中国福建省 城塞住居・福建土楼

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ミサワホーム総合研究所は、住まい方からまちづくりまで、暮らしに関する様々な住文化情報の研究・発信を行っています。
研究員の大谷は、世界各地の歴史的な都市やまちを訪れ、その情緒ある景観を透明水彩の素朴なタッチで描き留めてきました。歳月を重ねた暮らしの中から醸し出される魅力を、その場所が持つ住文化や伝統に纏わるエピソードと共にご紹介します。

 その特徴的な外観から軍事施設と誤解されたこともあるという建物は、血族が共に暮らす多世代同居の集合住宅です。円形の外壁に沿って住居が並ぶ地上3階から5階建ての建物は、上空から見るとまるで巨大なドーナツ。祖先を祀る祖廟を中心に、共用の井戸や台所、浴室、家畜小屋などが配置されています。大きなものでは400人以上が暮らすにもかかわらず、入り口は1箇所だけ。ヨーロッパ中世の城郭都市がそのまま家になったような城塞住居なのです。

 住民の多くは漢民族の末裔と言われ、戦乱を逃れて福建省近郊の山岳部に移住し、この土楼を建立しました。そのため、「よそ者」という意味で「客家」土楼とも呼ばれています。約900年前に現れた客家の家が、一般に知られるようになったのはつい最近のこと。多くが空き家となる一方で保存活動も進み、2008年には世界遺産に登録され、現在では世界中の人々が見学に訪れています。

(画・文 大谷宗之)

 

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