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新たな時代の住宅購入者像を考える
ーアンケート調査から分かる価値観変化の分析ー

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1.はじめに

日本の住宅トレンドは、戦後から大きく変化してきました。ミサワホーム総合研究所ではその変遷を、戦後の住宅不足から量を追求した「量の時代」、質の向上を求めた「質の時代」、デザインやインテリアの好みが重要視された「味の時代」、そしてエネルギーなどの技術による機能性向上の「技の時代」の4つの時代に分類しています。そして現在は、脱炭素社会の実現に向けエネルギー効率や環境性能の向上が求められる、「新たな質の時代」が到来していると考えています(図1)

(図1)4つの時代(弊所による整理)の変遷と社会動向

省エネ基準適合や断熱等級基準の引き上げ、新築住宅のZEH水準への適合義務化のほか、ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ性能を有するGX志向型住宅の新築支援事業が実施されるなど、住宅市場では高品質で持続可能な住まいが求められています。
弊所では、くらしをデザインする住宅メーカーの立場から、社会の変化が生活者の「くらしのあたりまえ」にどのような影響を与えたか、新たなくらしの予兆を明らかにすることを目的とした調査を行い、その結果をレポートにまとめました (調査レポート「生活者のくらしにおける価値観変化調査」)。
本稿では、特に住宅購入層として大きな割合を占める20代から40代に着目し、価値観の変化を捉えるべく、さらに深掘りした分析結果をご紹介します。急速に変化する社会環境や生活の中で、生活者の住宅購入・計画における選択肢や優先順位がどのように変わりつつあるのか、その兆しを明らかにしました。そして、分析から得られた洞察をもとにこれからのユーザー像を考察し、住宅メーカーが提供すべき製品やサービスの方向性を探りました。

2.分析概要:住宅購入層のニーズ・価値観の変化に注目

調査では、コロナ禍を経てくらしの環境が大きく変わりつつある中での生活者の価値観や行動、ストレスや不満、生活の質に関する現状認識を明らかにしました。分析では、調査データの年代や性別ごとの構成比から兆しとなり得る特徴的な傾向を抽出するため、技術やアイデアの市場における普及過程を分析するイノベーター理論を活用しました。イノベーター理論とは、新しい技術やアイデアが市場に普及していく過程をモデル化したものです。この理論では、最初に採用する消費者の層であるイノベーターと、続いて採用するアーリーアダプターの合計値である16%は、普及の兆しを示す重要な基準とされており、この基準に基づき、アンケート結果から将来的に一般化する可能性のある価値観を考察しました。

3.分析結果のポイント

今回の分析では以下のような傾向が明らかになりました。

①在宅環境の充実
20~30代男性を中心に、仕事のために自宅に集中できるスペースを作る傾向が見られました。また、40代男性を中心にテレワーク用品の購入や、遮音性能への関心の高まりが見られ、生活空間を最適化する行動が確認されました(図2)

(図2)在宅環境に関する調査結果


②収納や生活動線への関心

20~30代女性においては、収納不足や生活動線に対するストレスが強く、これらを改善するための模様替えや断捨離といった行動が見られました(図3)。また、より効率的な家事動線や、自宅内の整理整頓に関するニーズも高まっています。


(図3)
生活環境に関する調査結果


③自動化への期待

20代男性を中心に、生活の自動化に対する期待が明確に見られました。家事負担の軽減や便利な住環境を求める声が多く、スマートホーム技術の普及に対する関心が高まっていくと考えられます(図4)


(図4)自動化に関する調査結果


④健康維持とオフ時間の充実
健康意識の高まりにより、身体を動かしたり、趣味を楽しんだりすることで心身をリフレッシュさせるための空間づくりを重視する価値観が広がっています。特に20代男性や20~30代女性ではその傾向が顕著で、住まいにおけるオフ時間の充実が重要視されています(図5,6)


(図5)
空間づくりに関する調査結果(男性)


(図6)
空間づくりに関する調査結果(女性)

4.まとめ

本調査では、20~40代を中心に価値観の変化が明確に見られました。今回の分析で明らかになった変化から、今後の住宅を購入するターゲットとして2つのペルソナ(マーケティングの際に、顧客像を具体的にイメージしやすいように設定する人物像)が想定できると考えられます。
一人目は「住まいにこだわりを持ち、自分の城を作りたい男性」です。在宅環境の充実を重視し、健康維持や趣味のための空間づくりに注力しています。特に遮音性能や家事動線への関心が高く、自動化技術の活用にも積極的です。
二人目は「住まいにこだわりを持ち、周囲を整えてすっきりと暮らしたい女性」です。収納不足や生活動線の改善に強い関心を持ち、整理整頓や模様替えを積極的に行っています。また、健康維持やリラクゼーションのための空間づくりにも関心が高いです。これらのペルソナは、多様化する生活スタイルの中で、今後の住宅市場におけるユーザーの価値観として一般化していく可能性を持っています。
ミサワホーム総合研究所では、このような価値観の変化に引き続き着目し、時代や社会背景を捉えたより良い住宅づくりに貢献できるよう取り組んでいきます。

 


調査概要
調査名:生活者のくらしにおける価値観変化調査
調査期間:2024年1月11日~1月12日
調査方法:Webアンケート調査
分析対象:20~69歳の同居人のいる男女
     20~50代は世帯年収400万円以上
     60代は世帯年収200万円以上
サンプル:1030 (20~60代まで男女均等割付)
     https://soken.misawa.co.jp/news/20240411/3446/

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