⼈や団体、企業、専⾨学校、⼤学がつながることで、プロジェクトは具体化していきました。
昭和55年の用地取得から、およそ38年にわたって公民学が手を取り合いながら、大規模な開発が進められてきた八王子みなみ野シティ。その新たなプロジェクトが「結びのまち」です。八王子市をプロジェクトサポーターに迎え、日本工学院八王子専門学校・東京工科大学やFARMART・畑会といった地域の学校・団体と事業協力を行いながら、住宅生産振興財団とハウスメーカー10社がつくる大規模コミュニティ(114区画)のまちづくり。ミサワホーム総合研究所は、まちづくりコーディネートを担当しました。多世代の方が心地よく暮らせるだけでなく、地域や社会が抱える課題をも解決していくために多くの叡智を結集したプロジェクトです。
結びのまちをブランディングするにあたり、八王子市の東南部地域の現状と課題の調査資料を取得しました。みなみ野地区の結果を見てみると「学生が多い街なので、住民同士のつながりが希薄だ」「コミュニティが衰退している」という住民の不満や地域の課題が改めて浮き彫りになってきました。そうした様々な課題に向き合い、解決していくために「色んな人々が自然とつながる仕組みやアイデアが大切で、住まいを循環させたり、世代を超えて若い人から高齢の方まで多世代がともに暮らせないだろうか。」そんな風に考えました。
そこから最終的なコンセプトにつながる「多世代MIX」というキーワードにたどり着きました。地域が抱える課題には、コミュニティの希薄化に起因しているものが多くあります。そのために、まち単体で考えるのではなく、地域ともつながるための仕組みづくりを行ったのが「結びのまち」です。「多世代MIX」というキーワードをより具体的にしていくために、まずは八王子みなみ野シティを知るためにまち歩きをしながら地域の魅力と課題を色々と発見しました。例えば魅力のひとつが、「結びのまち」計画地北側に位置する小比企町の農地。約30haの農地が広がっており、計画地からは歩いてわずか4、5分。この農地と将来の住民とつながることができたらと考えました。一方で課題としては、八王子みなみ野シティ周辺には過去にデベロッパーさんが開発した古い街が点在しており、エリアを歩いていると高齢の方が多いというのは感じました。30年後の「結びのまち」を想像しながら、同様の課題を抱えないようにするにはどうすればいいだろうかと。そうして見つけた魅力や課題を踏まえて、関係団体や八王子市へ相談を持ちかけたのが次のステップでした。人や団体、企業をひとつひとつつないでいくことで、ゆっくりですがプロジェクトが実現に向けて成長していったと思います。これら地域の課題が分かり、地域の人々がつながる「場」が必要であると考えました。そこで結びのまちの集会施設を住民のコミュニティを育む交流拠点(住民寄付書籍による図書館)として企画・設計デザインしました。この場を「ころりん」とネーミング。2020年4月から2年間、ミサワホーム総合研究所が運営管理します。その間すまいコミュニティマネージャーが適宜常駐(週4日程度)し、既成住宅市街地のコミュニティ連携の知見を取得します。そして今後市内の既存住宅地で応用する手法を模索します。将来的には多世代の交流拠点となり、周辺住宅地の住民ともつながり、いざという時災害時の拠点にもなります。備蓄倉庫や太陽光発電や蓄電池を備え、ミサワホームが考える「微気候デザイン」を採用しています。入居世帯が半数を超える頃、住民による管理組合を設立、「ころりん」は管理組合に寄贈され、住民自らが運営する計画となります。