「ヒヤリハット」。この言葉を耳にした方は少なくはないのではないでしょうか。医療現場や製造現場などで事故・災害になってもおかしくなかった状況を「冷や汗をかく→ヒヤリ」「声も出ず息をのむ→ハット」で表した造語ですが、一つの事故が発生するまでには多くの類似した「ヒヤリハット」の事例が潜んでいます。
日常生活の事故の場合、「自分の注意力の問題」と考えられたり、子どもの事故になると「目を離した親の責任」として片付けられる傾向があります。結果、個人の事故や「ヒヤリハット」の経験が社会において活かされないまま、同じような事故が後を絶ちません。2003年を境に交通事故死よりも家庭内事故死の数が上回り、残念ながら増加傾向となっています。とりわけ子どもの死亡原因に「不慮の事故」が常に上位3位以内を占める傾向が続いています。
こうした状況を少しでも改善したい、家庭内事故を未然に防ぎたいという思いから、住まいに潜む「ヒヤリハット」を子どもと保護者それぞれの立場で学んでいただくため、ミサワホーム総合研究所では『ヒヤリハットさんちへいってみよう!』という絵本を発行しました(*現在書籍は販売しておりません。当Webサイトでご覧いただけます)。この中のイラストによる生活シーンには、どこの家庭でも起こりがちな「ヒヤリハット」な視点が隠されており、子どもが自ら探し出すことで、そこから得られる「気づき」により、楽しみながら実生活での危険予測力=安全判断力を育むことができる構成となっています。
また子どもの成長とともに変化する危険を予測し、家庭内事故の対策をしていくことは保護者の大切な役割と考え、保護者用に「事故タイプごとの対策」解説ページを設けました。ここでは、家庭内の日常的な事故に絞って作成しているため、示した事例は事故や対策を学ぶための一例です。起こりうる事故や施すべき対策は状況により様々のため、取り上げている以外についても配慮は必要です。この本を読みながら子どもと「なぜ危険なのか?」など親子で話し合うきっかけを作ったり、家庭における環境整備や安全対策の見直しに活用していただくこともできます。
この制作はミサワホーム総合研究所の開発理念“4つの育む-環境を育む・暮らしを育む・家族を育む・日本の心を育む”に基づいています。現在は絵本の販売をしていませんが、ミサワホーム総合研究所のホームページ上で体験できる家庭内安全教育サイトでご確認いただけます。コンテンツは学校関係者からも一目置かれ、家庭内だけでなく、教育の現場でも活かされています。ゲームのように楽しめる内容でこうした子どもたちへの“住育”などが評価され、2009年の第3回キッズデザイン賞を受賞しました。
危険には「予測できるもの」と「予測できないもの」があり、危険予知能力は成長に従って身についてくるものですが、予測不可能かつ重症につながる危険は、あらかじめ大人が取り除くことこそが正しい対策と言っても過言ではないでしょう。子どもの頃から住まいにおける環境整備に積極的な学びを重ねていくことで、本当に良い住まい、家族が安心して過ごせる住まいづくりをしていただきたいと願っています。
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